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ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」(Alternative für Deutschland :AfD)等の躍進の真の背景とドイツ政府や裁判所の取組みを探る

   フランスやドイツ等を始め欧州議会選挙での極右政党の躍進が著しい。筆者は、その背景について改めて調査する中で特にドイツにおける極右政党に対する諜報機関や裁判所の厳しい見方を整理したいと考え、今回の取りまとめることとした。  特にドイツ連邦共和国基本法の問題、 刑法解釈問題につきピッツバーグ大学ロースクールのレポートなどを中心に仮訳とともにまとめてみた。  なお、ドイツだけでなく EU 全体として極右思想やテロ思想の対する具体的法規制の具体性についても一部引用した。先般の都知事候補の選挙広報やテレビ放送などにおけるわが国憲法の言論の自由規定のはき違い・誤解などをみるにつけわが国でも参考とすべき点が多い。  なお、関係者の略歴、写真、関係 URL とのリンクは筆者の責任で行った。いずれも高学歴かつ政治面の専門性や経営実務経験を有していること等、注目される点も多い。 1. 2017 年 1 月 17 日、連邦憲法裁判所は、極右政党 NPD (国民民主党)について違憲性を認めたが、違憲に当たる目的を達成するほどの勢力を確認できないとして、政党禁止としなかった    外国の立法 (2017.4) 国立国会図書館調査及び立法考査局) から以下、抜粋する。 今回の判決において、連邦憲法裁判所は、NPD のコンセプトは「自由で民主的な基本秩序」の排除を目指すとし、その違憲性を確認した。しかし、同時に、新たな政党禁止の要件として、当該政党が違憲に当たる目標を実現する可能性があることの具体的な根拠がなければならないことを示した。連邦憲法裁判所は、以下のとおり、議会及び議会外における NPD の影響力を確認し、NPD が違憲に当たる目標を実現する可能性はないと判断した。 <議会における影響力> ・連邦議会に議席を有したことは一度もない。 ・州議会については、ザクセン州において 2004~2014 年に、メクレンブルク・フォアポメルン州において 2006~2016 年に議席を有したが、現在は全く議席を有していない。 ・欧州議会には、1 議席を有するのみである。 ・自治体の議会においては、現在合わせて約 350 議席を有する。しかし、自治体の議席数が全部で 20 万以上であることを考慮すれば、取るに足らない。 連邦憲法裁判所は、NPD は、自治体の議会において若干の議席は有するもの
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最高裁大法廷は旧優性保護法の下で不妊手術の強制は憲法第13条及び第14条第1項違反を理由に国に賠償命令を命じるとともに下級裁判所における改正前の民法の解釈巡る除斥期間の解釈を憲法違反と判示

   令和6年(2024年)7月3日、最高裁判所大法廷(裁判長:戸倉三郎長官)は旧優性保護法(Eugenic Protection Law)の下で不妊手術を強制した(forced sterilisation)のは憲法第13条及び第14条第1項に明らかに違反するとして、国に賠償命令を命じるとともに、違法な旧法を放置してきた国会議員の責任を明確化し、さらに下級裁判所における改正前の民法の解釈巡る「除斥期間」 (注1) の解釈を憲法違反と判示した。  筆者は、この判決の意義を改めて内外メデイアの英字紹介レポートの解説を期待したが、JIJI.com、Nikkei Japan、Japan Timesなどいずれも一長一短な内容であった。また、併せてピッツバーグ大学ロースクールやBBCの英字ニュースを改めて読んでみたが、それらも同様であった。  この判決については後日、専門家による詳細な解説が行われることは間違いないが、筆者なりに画期的な内容を持つ本判決の主要な論点整理を行う。  なお、わが国民法の根拠法といえるドイツ民法第5章の消滅時効の規定の訳文(2015年3月)があり、原文を参照のうえ併せ引用した。 1.最高裁判決の重要ポイント 最高裁判所 戸倉三郎 長官 (1)最高裁判所は7月3日、即日判決文を 公表 した。 判決文全文 参照されたい。(裁判長裁判官 戸倉三郎 裁判官 深山卓也 裁判官 三浦 守 裁判官 草野耕一 裁判官 宇賀克也 (注2) 裁判官 林 道晴 裁判官 岡村和美 裁判官 安浪亮介 裁判官 渡 惠理子 裁判官 岡 正晶 裁判官 堺 徹 裁判官 今崎幸彦 裁判官 尾島 明 裁判官 宮川美津子 裁判官 石兼公博)  主文部を抜粋、以下で引用する。 1. 優生保護法中のいわゆる優生規定(同法3条1項1号から3号まで、10条及び13条2項)は、憲法13条及び14条1項に違反する。 2. 上記優生規定に係る国会議員の立法行為は、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受ける。 (注3) 3. 不法行為によって発生した損害賠償請求権が民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段の除斥期間の経過により消滅したものとすることが著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができない場合には、裁判所は、除斥期間の主張が信義則に反し又は権利の濫用として許されないと

児童のプライバシー保護強化にかかるコロラド州「2021年コロラド州プライバシー法(CPA)」の改正法案SB 41とそのモデル法たるコネチカット州立法SB 3の概要

    筆者は個人情報保護法とりわけ児童の保護強化に関する米国州や英国の立法の実態をブログで紹介してきた。具体的には米国の州については、 2024.4.2 ブログ 「フロリダ州、オハイオ州およびウタ州等の未成年者のソーシャル・ メディア・ プラットフォーム利用にかかる厳格な規制州法立法とそれらを巡る憲法違反裁判等の最新動向」 、英国については 2024.4.6 ブログ 「英国の個人情報保護機関である英国情報コミッショナーは SNS 等オンライン利用にかかる子供のプライバシー保護強化のための具体的施策に関し 2024 年から 2025 年の優先事項「児童規範戦略」 を発表」 で取り上げた。    今回のブログは、コロラド州「 2021 年コロラド州プライバシー法( CPA )」の 改正法案SB 41 を可決した情報をローファーム (Husch Blackwell LLP) の解説記事および同州議会の法案上程者の解説を概観する。なお、 Husch Blackwell LLP) 解説が取り上げているとおり、法案 ” SB41” はコネチカット州の立法をモデルにしていることから、あえて今回のブログでは 2023 年 6 月に署名された コネチカット州の SB 3 についても併せ解説を試みる。 Ⅰ.コロラド州の児童データプライバシー法案 (SB41) 1 . コロラド州議会が児童データプライバシー法案を可決 を仮訳 著者はHusch Blackwell LLPのassociate (注1) 弁護士Shelby E..Dolen(シャビー・.Eドーレン)氏である。 Shelby E.Dolen 氏  5月8日の州議会閉会に先立って、コロラド州議会は児童のデータプライバシーの保護を追加する「2021年コロラド州包括プライバシー法(CPA)」の 一部改正法案SB 41 を可決した。 コロラド州知事ジャレッド・ポリスの署名が成立すれば、 2025 年 10 月 1 日に発効 することになる。この法案は、未成年者(18歳未満)にオンラインサービス、製品、機能を提供する事業体に新たな義務を課すことになる。 この法案は、2023年6月に署名された コネチカット州のSB 3 をモデルとしている。  以下の記事では、SB 41 に基づく義務の概要と、SB 41 (注2

米コロラド州は米国内で最初の州として人工知能 (AI) の使用を規制する法案 (SB24-205) を可決、その内容を概観する

      コロラド州は、 米国内で人工知能 (AI) の使用を規制する法案 (SB24-205) を可決した最初の州となった。 この法律は、さまざまな分野にわたる AI テクノロジーの 倫理的 、 法的 、 社会的 な影響と予測される事態に対処することを立法目的としている。    筆者は、かつて 2 月 3 日付けブログ 「 AI 立法 のトレンド : 米国の州法案の発展を概観」 、 3 月 6 日付けブログ 「わが国の AI 立法の在り方を見据える観点から EU の AI 規則案( AI 法案: Artificial Intelligence Act )の最終段階を改めて探る ( その 1) 」 、 「同 ( その 2 完)」 を投稿した。    今回のブログは、これらを受け (1) ローファームの解説を仮訳するとともに、 (2) コロラド州議会の法案上程者の解説の仮訳を試みるものである。特に生成 AI については倫理的な問題だけでなく法的にも大きな課題をかかえていることから、筆者なりに注記を加えながら補筆した。 1. Lexblog 「 Colorado Passes AI Regulation 」 の 仮訳   法案全条の原文 参照。  同法は消費者と対話することを目的とした高リスク AI システムの開発者または導入者を含む、コロラド州でビジネスを行うすべての人物が対象となる。 この法案では、「高リスク AI システム」を、結果的な意思決定を行う上で重要な要素となる AI システムと定義している。 特に、重要な決定を下さない限り 、顔認識( facial recognition, ) (注1) 、マルウェア対策、データストレージ、データベース、ビデオゲーム、チャット機能を使用しない不正行為対策技術は(とりわけ)含まれていない。  この法案には、AIの開発と導入における 倫理基準 、 透明性 、 説明責任 の促進に重点を置き、政府、教育、企業内でのAIの使用を管理する包括的な枠組みが含まれている。 この法案は、意思決定プロセスにおける AI の使用に関する開示を義務付け、AI 開発を導くための倫理基準を定め、AI 関連のバイアスやエラーが発生した場合の救済と監視のメカニズムを提供します。 これらの救済メカニズムには、消費者が高リスク

2024年秋の米大統領選挙や同年3月の一部裁判の最高裁判決等を控えスピードアップするトランプ裁判の動向と争点

    12月に入りトランプ前大統領に関する裁判の動向に関する米国メデイアの報道に動きが顕著になっている。筆者は 本ブログ で一部取り上げたが、やはり断片的メデイア情報では不十分であり、わが国でも本質的かつ正確な裁判解説が必要と考えた。  その結果、やはり毎日グローバルな裁判動向を取り上げているピッツバーグ大学ロースクールの提供サイト“JURIST”でかつ同スクールの博士課程にある ローレン・バン (Rauren Ban) 氏 の解説記事が最も網羅的かつ正確であると判断した。 Rauren Ban 氏  そこで“JURIST”の記事からRauren Ban氏の解説を3本抜粋し、以下で補足を加えたうえで仮訳した。なお、同氏を初めトランプ裁判の解説は2024年早々より具体的展開が深まることは違いない。筆者なりに引き続きフォローしたい。  なお、米国のメデイアだけでなくわが国のメデイアも同様に各裁判所の決定につき一喜一憂している節がある。トランプ陣営における特に2024年11月の大統領選をにらみ最高裁の判決の先延ばしを図っている事実を冷静に受け止め、法的争点を正確に報道するのが法学者やメデイアの責務であろう。 1.連邦地裁判事は 2020 年の米国大統領選挙妨害事件でトランプ大統領の免責特権の主張を否定    2023 年 12 月 2 日付けJURIST解説記事 を以下、 仮訳 する。  ドナルド・トランプ前米大統領の2020年の選挙妨害事件を管轄する連邦地裁判事は12月1日、トランプ氏は 大統領免責特権 (presidential immunity) (注1) の主張によって係争中の 4件の刑事告発 を却下することはできないとの判決を下した。  米国連邦地方裁判所判事ターニャ・チュトカン(US District Judge Tanya Chutkan)氏は、トランプ氏は米国大統領として「公的な責任の『外周』内で行われた行為に対する刑事訴追の絶対的な免除」を享受しているとするトランプ氏の主張に反論した。 チュトカン氏はその代わりに、「元大統領は連邦刑事責任に関して特別な条件を享受していない」と認定した。 Tanya Chutkan 判事  トランプ氏は当初、10月5日に 大統領の免責に基づいて訴訟を却下する申し立て を提出していた。その申し立て

米大統領令(EO: Executive Order 14110)の具体的内容と意義およびそれに基づく責任の履行を支援するためNIST「情報提供依頼文書 」の具体的内容

   筆者は、12月6日の本ブログで2023年10月30日の大統領令(EO: Executive Order 14110)(以下、「EO」という)を受けたNISTの具体的行動につき 「 NISTからこのほど公開された「 NIST SP 800-226 草案」および「差分プライバシー保証を評価するためのガイドライン草案」に対するパブリックコメントの背景と意義」 を取り上げた。  しかし、執筆後もいまいち大統領令(EO)のファクトシートも含め真の目的や商務省の規則案のとりまとめ期限など疑問点が残されていた。その内容を補完する意味で今回のブログで補筆するとともに、後段でNISTが2024年2月2日を期限として発布した「情報提供依頼文書 (Request for Information (RFI) )」の概要について解説を試みる。  また、本ブログでは、わが国では詳しく論じられていない米国「国防生産法(Defense Production Act of 1950 :DPA)」の意義と最新動向にも言及した。  なお、今回のブログの内容は12月6日の筆者ブログと重複する部分が一部あるが、 Kilpatrick Townsend & Stockton LLPの和文解説 と併せ読まれたい。 Ⅰ.大統領令 (EO: 14110) の具体的内容の解析    JD Supra, LLCの 「The highly-anticipated US Executive Order on artificial intelligence: Setting the agenda for responsible AI innovation」 を要約しつつ仮訳する。  このEOは、多くの点で AI に関するこれまでのバイデン政権の行動を超えている。 この広範囲かつ堅牢な大統領令は、AI を規制するために既存の当局を利用することを想定して、米国の行政部門および政府機関 (機関) に、①標準、②フレームワーク、③ガイドライン、④最善実践内容を開発するよう指示した (また、独立機関にも同様に奨励する)。 また政府機関は、AI の責任ある使用に関係するほぼすべての連邦法、規則、政策に対して具体的な措置を講じる必要があるとする。  EOは、AI の使用から得られる利点を認識する一方で、国家安全保障、重要イン