スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

6月, 2024の投稿を表示しています

WHO年次総会の感染症対策強化にかかる国際保健規則の改正、「パンデミック条約」決議の1年以内延期問題、オーストラリアで初めてH5N1型鳥インフルエンザ感染者がインドの帰国女児で発見(その2完)

  4.「オーストラリアで初めて鳥インフルエンザに感染した2歳女児が昨日ビクトリア州で報告され、インドで H5N1 型のウイルスに感染した女児が、 2024 年 3 月にオーストラリアに帰国した際に発症」事案の感染症専門家の解説の 仮訳  著者であるレイナ・マッキンタイア(Raina MacIntyre)教授は、オーストラリア・国立保健医療研究評議会(National Health and Medical Research Council:NHMRC)主席研究員、カービー研究所バイオセキュリティプログラムの責任者、ニューサウスウェールズ大学のグローバルバイオセキュリティ教授である。 Raina MacIntyre 氏  ヘイリー・ストーン(Haley Stone)氏は、レイナ・マッキンタイア教授が率いるカービー研究所のバイオセキュリティプログラムの博士課程の学生である。  5月22日、インフルエンザに関するすべてのデータを共有する世界イニシアチブである「鳥インフルエンザ 情報 共有 国際推進機構(Global Initiative on Sharing Avian Influenza Data;GISAID)」 (注11)(注12)(注13)(注14)(注15)(注16) で公開された情報によると、この子どもは2歳の女児であることが確認されている。彼女は3月初旬に陽性反応を示し、非常に具合が悪かったと報告されていたが、その後完全に回復した。  ビクトリア州保健省によると、接触者追跡調査で新たな感染者はおらず、他者へのリスクは非常に低いとのことである。  H5N1 に感染した人間の場合、通常、感染した家禽と密接な接触がある。H5N1 は、人から人へ簡単には広がらないが、しかし、人間の場合の致死率は約 50% である。 1.鳥インフルエンザが国内および世界中でニュースになる中、この最新の状況をどう考えるべきか ? H5N1の世界的感染状況  この子供がインドでどのように感染したか、またこの症例がインドのどこで発生したかに関する公開情報はない。しかし、インドでは現在、ケララ州、アーンドラ プラデーシュ州、マハラシュトラ州で大規模な鳥インフルエンザの発生に直面している。  H5N1 はインフルエンザ A の系統で、さらに系統群と呼ばれる変種(variants)に分け...

WHO年次総会の感染症対策強化にかかる国際保健規則の改正、「パンデミック条約」の決議の1年以内延期問題、オーストラリアで初めてH5N1型鳥インフルエンザの感染者がインドから帰国女児の発見(その1)

   NHK等は世界保健機関(WHO)(194加盟国)の年次総会で行われていた感染症対策を世界的に強化するための「 パンデミック条約 (Pandemic Agreement) 」をめぐる協議は、6月1日、最終日を迎えたが、各国の間で意見の隔たりが埋まらず、交渉期間を最大1年、延長することになった旨報じた。  スイスのジュネーブで5月27日に始まったWHOの年次総会は6月1日の最終日を迎え、感染症対策を世界的に強化するための「パンデミック条約」をめぐる協議の行方が焦点となった。  この条約は、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大した際、先進国と途上国の間で対策に格差が生じた教訓を踏まえ、途上国への支援策などを盛り込んだ国際条約で、今回の総会での採択を目指して事前の調整が行われたものの、ワクチンの分配などをめぐって折り合えずにいた。  このため総会に入っても、各国の間で協議が重ねられたが、意見の隔たりが埋まらず、今回の総会での採択は見送って、交渉期間を最大1年、延長する決議を全会一致で採択したというものである。  しかし、以上のような解説からは今回の総会決議の成果につき全体像は浮かび上がってこない。  今回のブログは、まず、(1)WHOのサイト年次総会の解説、(2)欧州連合理事会サイトでみる「パンデミック条約合意」の意義や目的、(3)オーストラリアでは、ビクトリア州にインドから帰省中の2歳女児からH5N1型鳥インフルエンザが検出され、鳥インフルエンザの特定の株による初のヒト感染例が記録されたとする報道が流れたが、この問題をオーストラリアのメデイアではなく、(4)ニューサウスウェールズ大学感染症専門家の解説にもとづき 仮訳 する。 今回のブログは 2 回に分けて掲載する。 1. WHO 年次総会のリリース   WHOのリリース文 を 仮訳 する。  世界保健機関の194加盟国による年次総会は、歴史的な展開として、6月1日、 国際保健規則( 2005 年)( IHR ) (注1) の 重要な改正案(第3版) で合意 (注2) し、遅くとも1年以内に世界的パンデミック協定の交渉を完了するという具体的な約束をした。これらの重要な措置は、すべての国で包括的かつ強固なシステムを導入し、あらゆる場所のすべての人々の健康と安全を将来の流行やパンデミックのリスクから守るために実...