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米証券取引委員会の連邦地方裁判所判決に基づくTelegramおよび子会社によるデジタル・トークン(TON)に対する投資家への12億ドルの不当利得返還や1850万ドルの民事罰金等に関する和解が成立

 筆者の手元に、米国証券取引委員会(SEC)から6月26日、インスタント・メッセージング・プラットホーム企業である 「テレグラム・グループ(Telegram Group Inc(以下 「Telegram」ということ))   (注1) の未登録のデジタル・トークン(暗号化通貨;暗号資産)「グラム」の提供が連邦証券法に違反したという容疑を解決するために、 「Telegram 」 とその100%子会社であるTON(ブロックチェーン・プロジェクトであるTON(Telegram Open Network))発行会社である 「TON Issuer Inc.」 との和解につき、ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所の承認を得たとするリリースが届いた。  被告2社はデジタル・トークンにつき投資家に12億ドル(約1,284億円)以上を返還し、1,850万ドル(約19億8,000万円)の民事罰金を支払うことに合意したとのことである。  この裁判は、関係者はわが国においても暗号化通貨に関係する者では大きく取りあげられているが、SECのリリース文も含めかならずしも法的に見た正確な内容とはいいがたい。  したがって、筆者なりに1933年証券法の条文、判決文の原本の内容、和解内容、関連するTelegram Groupの実態などにつき解説を試みるものである。  なお、この裁判については3月24日ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所の仮差押え命令判決に続き、4月1日同連邦地方裁判所は、米国および外国のすべての事業体に対し、メッセンジャー・サービス企業のTelegramの独自の暗号通貨(暗号資産)「グラム(Grams)」をICO (注2) 配布することを禁止するとの判断を下している。 1.2020.6.26 SEC緊急リリース「Telegram to Return $1.2 Billion to Investors and Pay $18.5 Million Penalty to Settle SEC Charges」の 仮訳  米国証券取引委員会は6月26日、Telegramの未登録のデジタル・トークン「グラム」の提供が連邦証券法の登録義務に違反したという容疑を解決するために、「Telegram 」とその100%子会社であるTON(ブロックチェーン・プロジェクトであるTON(Tel...

欧州連合理事会が欧州委員会や加盟国等に対し金融調査に関し重大かつ組織的な犯罪との戦いのさらなる改善を要求

  2020年6月17日、 欧州連合理事会リリース 「金融調査:理事会は重大かつ組織的な犯罪との戦いのさらなる改善を要求」 すなわち、同理事会は6月17日、 「重大かつ組織的な犯罪と戦うための金融調査の強化に関する結論(Council conclusions on enhancing financial investigations to fight serious and organised crime)」 を承認した。  今回の欧州委員会に対する理事会決議はEUだけでなくEUROPOLなどを中心とする金融調査機能の強化を目指すものである。EU内の組織犯罪の収益は 年間1,100億ユーロ(約13兆2,264億円) に達しており、没収率は非常に低いままであるという現状認識と、金融調査はEUが組織犯罪やテロを防止し、これと闘う上で最も重要であるという認識から始まっている。  今回のブログは、理事会のリリース等を中心に、重要な問題でありながら、わが国ではほとんど言及されていないEUROPOLやEUの関係機関の具体的かつ最新の動きを正確に理解すべくまとめるものである。   また、2020.6.19の 「Council of the EU calls for better response against serious and organised crime」 は、別の観点からこの問題を論いている。その内容は、理事会のリリース文とほぼ同一であり、本ブログではあえて取り上げないが、一方、アリーン・ドゥサン氏は英国とEUのBriex貿易協定交渉のトップの専門家である。本年3月4日、在英フランス商工会議所(French Chamber of Commerce in Great Britain)のインタヴュー記事 「 Trade Partner at the law firm Hogan Lovells, provides an outline of what we might expect from the Brexit trade negotiations」 を読んで理解が進んだ。大手法律事務所Hogan Lovellsの貿易問題パートナーであるアリーン・ドゥサン氏が、EU離脱貿易交渉に期待できることの概要を説明した。参考になるので、参考的に最後に3.で取り...

オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)がGoogleが提案したFitbitの買収に関する予備段階での懸念の概要を声明(その2完)

  【Appendix】オーストラリアの連邦裁判所の裁判記録の検索手順 専門家でなくても“File Number”さえ判明すれば詳細な資料は検索できる。今回の検索ではConcise Statementで「File Number 」=「NSD1760/2019」を確認できた。 なお、筆者はCommonwealth Courts Portalに登録済であるが。ここでは未登録者のアクセス手順で説明する。 実際に試されたい。 ①   ②まず、 連邦裁判所のHP から「Federal Law Search」を選ぶ。 ③画面下のacceptをクリック ④File Number*に「NSD1760/2019」を入力→Search by File Numberをクリックする。 ⑤裁判所名:Federal Court Australia,Registry; Title:AUSTRALIAN COMPETTITION AND CONSUMER COMMISSION v GOOGLE LLC&ANOR 等を確認する。 ⑥ CONSUMER PROTECTION をクリックし、詳細な事件内容を確認する。 ⑦Court Events and Order画面から詳細を検索する。 ***************************************************************************: Copyright © 2006-2021 芦田勝(Masaru Ashida).All rights reserved. You may display or print the content for your use only. You may not sell publish, distribute, re-transmit or otherwise provide access to the content of this document.

オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)がGoogleが提案したFitbitの買収に関する予備段階での懸念の概要を声明(その1)

    Last Updated 4 August, 2020  (紫色部が追加箇所)  6月18日、日本でいうと公正取引委員会や消費者庁にあたる「オーストラリア競争・消費者委員会」(以下「ACCC」という)は、「Googleが提案した Fitbit  の買収に関する予備段階での懸念の概要を説明し、消費者の健康状態データへのGoogleのアクセスが参入障壁を高めかつその支配的地位を一層高め、いくつかのデジタル広告および健康市場での競争に悪影響を与える可能性がある」と 発表 した。( 発表声明文 の 原文)  ウェアラブル・デバイスを製造する企業であるFitbitは、ユーザーの毎日の歩数、心拍数、睡眠データなど、10年以上にわたって消費者から健康情報を収集してきた。  ACCCだけでなく、海外主要国の規制監督機関は,従来から世界的に見たIT巨人であるGoogle 、Facebook等のGAFA  (筆者注1) の市場独占的活動や顧客情報の収集に対し、行政訴訟など厳しい姿勢を取り続けてきている。  (筆者注2 )  これまでのACCCのFacebookに対する予備的問題提起の背景を概略整理すると、以下のとおりである。 (1)2017年12月4日、当時の財務大臣であった Scott Morrison 氏は、デジタル・プラットフォームの調査を行うようACCCに指示した。 この調査では、デジタル検索エンジン、ソーシャルメディア・プラットフォーム、およびその他のデジタル・コンテンツ集約プラットフォームが、メディアおよび広告サービス市場での競争に与える影響について検討した。 特に、この調査では、ニュースやジャーナリズムのコンテンツの供給に対するデジタル・プラットフォームの影響と、メディア・コンテンツの作成者、広告主、消費者に対するこの影響について検討した。 (2)2018年12月10日、ACCCは調査結果として378頁の 予備報告書を発表 し、関係者からの意見を公募した。 (筆者注3) (3)最終報告書(623頁)は、財務大臣に提供された後、2 019年7月26日に公開された 。 (4)2020年2月27日に ACCCはリリース「Google LLC proposed acquisition of Fitbit Inc」で今後の検討スケジュー...