わが国では、本ブログも含めオーストラリアの裁判所判決を詳しく引用する例は少ない。今回の紹介する連邦裁判決は、スパム犯罪に対する特徴のある判決である。 すなわち、“Safe Divert”と呼ばれる詐欺手口を使い、香港を拠点とする出会い系サイト会社3社およびその幹部やオペレーター計5人が被告、携帯電話の活用、SMSチャット・ゲートウェイを利用、被告8人中7人に対する罰金刑合計額が2,225万豪ドル(約17億8千万円)と極めて高額であること等である。 今回のブログは、これら犯罪の手口を解説するとともにスパム問題の規制・監督機関である 「オーストラリア連邦通信メディア庁(Australian Communication & media Authority:ACMA)」 や 「連邦競争・消費者委員会(Australian Competition and Consumer Commission :ACCC)」 のスパムに対する近年の法執行や起訴の状況について紹介することが目的である。 米国であれば、この種の犯罪の起訴や法執行は「連邦司法省」や「FBI」の独壇場になると思うが、オーストラリアではまず通信メディア庁(ACMA) (筆者注1) による法執行・規制が優先している点がわが国の姿勢と共通性があるとも考え、紹介するものである(法執行の詳細な説明もACMA自身が行っていることも欧米各国とも異なる対応であり、興味深い)。 また、法執行時のプレスリリースには必ずその根拠法令や最近時の関連法執行に関する解説を注記するのは英国と同じスタイルである。わが国も参考とすべき点であろう。 取りまとめにあたり、以前にも 本ブログ (筆者注2) で取り上げたACCCが運営する詐欺阻止専門サイト“SCAM watch”等も参照した。 (筆者注3) なお、この情報と併せ 「オーストラリア連邦裁判所(Federal Court of Australia)」 の 判例等検索サイト の先進性・機能性についても紹介する予定であったが、機会を改める。 1.ACMAの最近時の詐欺犯罪規制の実態 (1)オーストラリアにおけるスパム規制法や規則ならびに関係法令 A. 「2003年スパム法(Spam Act 2003)」 は2004年4月10日に施行した。国際的なスパム...
わが国のメディアの多くが海外メディアの受け売りに頼る一方で、わが国のThink Tankのレポートも中央官庁等の下請けが多い。筆者は約18年かけて主要国の法制研究、主要Think Tank、グローバル・ローファーム、主要大学のロースクール等から直接データ入手の道を構築してきた。これらの情報を意義あるものにすべく、本ブログで情報提供を行いたい。