本ブログは2006年5月28日掲載分の改訂版である。 英国の個人情報保護および公的機関の情報開示の独立監督機関として有名な 「Information Commissioner Office(ICO)」 の委員であるリチャード・トーマス氏(Richard Thomas)は、5月12日に以下述べるような英国等における昨今の個人情報をビジネスとして取り扱う傾向の顕在化を踏まえ、現行の保護法 (筆者注1) や裁判における処罰の甘さを指摘した報告書「What price privacy?(副題は「機微個人情報をめぐる違法取引の実態」)」で、その厳格化のため処罰強化を含めた具体的取組みを議会や関係者に訴えている。 (筆者注2) Richard Thomas 氏 昨今わが国では施行後1年を迎え、過剰な保護法対策への問題指摘がある一方で、欧米諸国では保護対策・法制不備をめぐる議論や新たな個人情報の侵害行為への対策の議論が続いている (筆者注3) 。同報告書は、違法な個人情報の取引の実態検証を保護機関として独自に集めたデータを下に違法ビジネスの実態にせまるものであり、保護法自体は制度的に異なるものの、わが国が取り組む上で示唆に富む内容といえる。 1.違法売買の対象とされる主な個人情報の内容 ①現住所 ②車の所有権の細目 ③電話帳未搭載者の電話番号または通話記録 ④前科記録 ⑤銀行口座の細目 2.主な情報の売り手 ①私立探偵(private investigators) ②債務者の追跡業者とその部下(tracing agents) ③①や②の仲介業者や部下 ④犯罪者 ⑤公的機関、法律事務所、生命保険会社(ICOが独自に調査した結果、これらの機関が個人情報の調査を請け負っている場合があり、法的な制限が必要である) 3.主な情報の買い手 ①債務者の追跡役(trace debtors) ②ジャーナリスト(いわゆる有名人を追いかける) ③金融機関 ④かつての配偶者の居場所や金銭収入の詳細などについて現在疎遠になった者 ⑤詐欺の意図を持った者や証人や陪審員の脅迫を目的とする者 4.ICOへの消費者などからの苦情受付の実態と罰金刑の実態調査 (1)保護法は2000月3月1日に施行された。55条に基づく苦情件数は年間平均180件以上でそのほとんどがプライバシーが侵害さ...
わが国のメディアの多くが海外メディアの受け売りに頼る一方で、わが国のThink Tankのレポートも中央官庁等の下請けが多い。筆者は約18年かけて主要国の法制研究、主要Think Tank、グローバル・ローファーム、主要大学のロースクール等から直接データ入手の道を構築してきた。これらの情報を意義あるものにすべく、本ブログで情報提供を行いたい。