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米国史上最大規模の原油流出事故を巡る連邦規制・監督機関やEU関係機関等の対応(第4回)

    Last Updated:February 23,2021   2010年 6月24日付けの本ブログ 、 6月29日 および 7月9日 のブログで、世界的に注目されている歴史的海洋汚染事故である米国「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)」 の半潜水型海洋掘削装置(rig )爆発事故とその後の大規模な原油流失について連邦監督機関の対応や欧州議会総会での欧州委員会エネルギー担当委員の証言を中心に3回にわたりとりあげた。  今回は引き続き、ルイジアナ連邦地裁判決が出した連邦政府が発布した6か月間の掘削猶予モラトリアムに対する仮差止命令の意義や国土安全保障省合衆国沿岸警備隊(USCG)、連邦保健福祉省・食品医薬品局(FDA)の対応等について解説するつもりであった。  しかし、ここに来てこの問題が長期化し米国経済に大きなマイナス材料となることを予想させる情報が筆者の手元に入ってきたので急遽取り上げる。  すなわち、7月14日に連邦金融監督機関である連邦準備制度理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)、財務省通通貨監督局(OCC)、財務省貯蓄金融機関監督庁(OTS)、全米信用組合管理機構(NCUA)および州銀行監督機関協議会(CSBS)が連名でディープウォーター・ホライズン事故で影響を受ける金融機関やその顧客保護のための支援策を 表明 したことである。  連邦機関が、大規模災害時にこのような金融支援策を打ち出すことは今までも珍しくない。また、本文で紹介するとおりその内容は決して即効性があるとは思えない。金融監督機関の姿勢を表明する程度かも知れないが、逆にこのような定型的な施策しか打ち出せないことが米国の悩みの証左といえるかも知れない。 1.取組みの背景  金融監督機関は金融機関が顧客とともに行動し、この状況下で影響を受ける借り手を支援し、あわせて結果的に地域コミュニティに良い影響をあたえる手段を検討することを強く促す。ガルフ・コーストに沿った地域ではかなりのビジネスに混乱や損害が発生した。この大規模災害に対応して、金融機関は顧客やコミュニティの重要な金融ニーズに合致すべく各種手段をとりうる。  この点で、金融監督機関は金融機関に対し、今回の大規模災害により影響を受けたと証明する顧客に代替手段を配慮するよう奨励するものである。...

欧州議会がSWIFTを介したテロ資金追跡プログラムにかかる暫定合意の改定協定を承認

      本年 2月9日 および 2月12日 の本ブログで、米国から強く要請があり、他方でEU市民の人権侵害につながる大きな問題として取り上げられ、EU議会だけでなくEU加盟国の情報保護委員等も巻き込んだ論議の内容について詳しく紹介した。  その後、EUの欧州委員会や米国のハイレベルの協議が行われていたが、6月上旬に欧州委員会域内担当委員セシリア・マルムストロム(CECILIA MALMSTRÖM)氏は米国とのハイレベル協議の結果を踏まえ、改正案を議会に提出していた。 CECILIA MALMSTRÖM 氏  6月28日(月)、欧州連合理事会の輪番議長国(rotating presidency)であるスペインのアルフレド・ペレス・ルバルカバ(Alfredo Pérez Rubalcaba )内務相と、マイケル・ドッドマン(Michael Dodman)駐EU米国大使館経済担当官は、マルムストロム氏の立会いの下で 署名 した。  最終的に改正協定案は7月8日の本会議に諮られ、投票では、賛成484票、反対109票、棄権9票で可決・承認され、2010年8月1日施行されることとなった。  今回のブログは本年2月以降の動向等も踏まえ問題点を整理することであるが、7月8日の マルムストロム委員の声明 のとおり、EU市民にとって(1)個人データへのアクセスと使用に関する透明性確保の完成、(2)プライバシー保護を保証するための適切な手段と救済措置が手当てされたといえるのか、今後改めて EDPSの意見書 や“StateWatch”や“EDRi(Digital Civil Rights in Europe)”等関係団体による法的問題や人権上の課題が明確となった段階で詳しく分析のうえ論じてみたい。  (筆者注1)  なお、この問題だけではないがEUの議会関係者が指摘するリスボン条約に基づく議会の権限強化のあり方論がある。この問題についても機会を改めたい。 1.改正協定の議会での承認にいたる経緯 (1)6月上旬に、 EU議会、欧州委員会、米国当局間の外交交渉に基づく協議によりマルムストロム委員による改正協定案が提示された。また、6月15日、委員会の最終協定案(COM 316)が決定された (2) 6月22日、欧州情報保護監察局(EDPS)による欧州委員会の最終協定案に対...

米国史上最大規模の原油流出事故を巡る連邦規制・監督機関やEU関係機関等の対応(第3回)

    6月24日付けの本ブログ や 6月29日のブログ で、世界的に注目されている歴史的海洋汚染事故である米国「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)」 の半潜水型海洋掘削装置(rig )爆発事故とその後の大規模な原油流失について連邦監督機関の対応を中心に2回にわたりとりあげた。  今回は、EU等国際的石油掘削メジャーの監督にあたる国々の対応にも厳しさが増している状況を反映するため、さる7月7日、欧州委員会エネルギー担当委員の ギュンター・エッテインガー(Günther Oettinger) 氏(ドイツ)が欧州議会総会で行った「沖合い(offshore)の原油探査や採取についてリスク、責任および規制強化」と題するスピーチの内容を 仮訳 で紹介する。 Günther Oettinger  氏 1.欧州議会総会での欧州委員会エネルギー担当委員のスピーチ  2010年7月7日、欧州議会総会で欧州委員会エネルギー担当委員ギュンター・エッテインガー( Günther Oettinger )氏は「沖合い(offshore)の原油探査や採取についてリスク、責任および規制強化」と題する スピーチ を行った。欧州委員会の域内の関係大手企業へのアンケート調査の実施や加盟国の規制監督機関や法制度のあり方につき対策の考えが明示されているので、ここでその要旨を紹介する。 (筆者注1) 2.要旨 ・本年5月の本総会において私が初めて本件につきスピーチを行った時は、域内の沖合いの原油掘削大手企業の代表者を召集した時期であった。私は各企業の安全政策の精査に関するアンケートの回答を要請した。  我々は来週7月14日開催の会合で、潜在的な弱点を特定するため適用すべき基準と手続の双方を見直すつもりである。私は、その翌15日に 欧州議会環境委員会(European Parliament environment committee) を開催し、その結果を踏まえたエネルギー委員としての提案を行うつもりである。これと並行して関係する委員会事務局で既存の法律を詳しく調査している。  エネルギー委員会の調査の中間結果で、沖合い採掘の安全性に関し多くの複雑な法律が関わっていることを示している。しかしながら、法律の数自体はあまり多くはない。重要なポントは以下の点である。...