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米国連邦巡回区控訴裁判所が電話サービス契約内容のウェブ上の変更表示の法的効果を否定

    Last Updated: Febuary 25,2022  わが国でも携帯電話やブロードバンド顧客の新規獲得をめぐり、家電量販店等の値引きセールスは厳しさを増すばかりである。わが国における消費者保護に関する法制度として代表的なものは「クーリング・オフ制度」であろう。しかし、その問題点は関係者からすでに指摘されているとおり、 根拠法は「特定商取引法」を中心としながら複雑多岐 にわたり、消費者には完全な理解はまず不可能である。 (筆者注1)    この複雑性に目をつけた司法専門家である司法書士や行政書士が、相談業務や代行業を始めていることも一般常識になりつつある。なお、わが国のクーリング・オフ制度は限定列挙であり、わが国ではそのほかに解約・法的救済方法もある。  例えば、(1)契約の「取消」が可能な場合としては、①不実告知(消費者契約法4条21項1号)、②断定的判断の提供(同法4条1項2号)、③不利益事実の不告知(同法4条2項)、④不退去(同法4条3項1号)、⑤詐欺(刑法96条)、⑥脅迫(同法96条)、未成年者取消権(民法5条)がある。  (2)契約の「無効」が可能な場合としては、①消費者契約法による一部無効(事業者の損害賠償責任を免除する条項(消費者契約法8条)、消費者が負担する損害賠償の予約や違約金を定める条項(同法9条)、消費者の利益を一方的に害する条項(同法10条)、公序良俗違反(民法90条)、錯誤(同法95条)がある。  (3)契約の「解除」が可能な場合としては、①合意による解約・解除、債務不履行解除がある。  その他としては「不法行為」による損害賠償、「支払停止の抗弁」がある。  わが国の消費者がこれらの内容をすべて頭に入れながら商品やサービスの提供を受けなければならないという現実は消費者保護行政制度上無視しえない重要な課題といえよう。  これに関し、2003年(平成15年)10月に独立政法人化された「国民生活センター」の権限強化問題が昨今問題となっており、本年4月に同センターのあり方や同センターを中核とした裁判外紛争解決等に関する制度のついて検討するため、内閣府は「国民生活センターの在り方等に関する検討会」を設置、7月30日にその 中間報告 を公表し、8月22日を期限とするパブリックコメントに付している。 (筆者注2)(筆者注2-2) こ...

米国連邦議会が「米国保護法(Protect America Act of 2007)案」を可決

    Last Updated : March 6,2021   わが国のメディアがあまり大きく取り上げていない人権問題として「国家の安全保障と通信傍受問題」がある。  わが国における犯罪捜査対策としての公表される唯一の「通信傍受」のデータは、 「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成11年法律第137号)」29条 に基づき法務省が行う「実施状況等」である。 平成18年度の統計 では、計16件の傍受令状が発付されており、いずれも罪状はいわゆる「麻薬特例法」に基づくもので対象となる通信手段はすべて「携帯電話」である。  一方、グローバル・ネット時代に技術面を優先して取組んできたわが国のISP等通信事業者にとって、通信傍受対策の法的検討は進んでいるといえるであろうか。大国の政府からのテロ対策等による要請を受けたときや秘密裏に国際的な傍受が行われているといった問題について、わが国の専門家による議論はあまりにもお粗末である。なお、2007年8月9日に政府は 「カウンター・インテリジェンス推進会議(議長・的場順三官房副長官)」 を開き、「カウンター・インテリジェンス(防諜)機能の強化に関する基本方針」を了承したが、その中核は、①国の安全・外交上の重要情報にあたる「特別管理機密」漏洩防止のための政府統一基準の策定(平成21年4月から適用予定)、②内閣情報調査室に 「カウンター・インテリジェンス・センター」設置 (2008年(平成20年)4月設置予定)する点であると報じられている。この点についても縦割り行政の弊害が出ないよう、政府のリーダーシップを期待したい。  今回は、8月初旬に上院・下院の可決を経て8月6日に大統領が署名し、約30年ぶりに改正が行われた米国の「1978年外国からの国家安全保障情報の監視に関する法律(Foregin Intelligence Surveillance Act of 1978)FISA」の 改正法( S.1927(110th):Potect America Act of 2007) に関する最新情報の裏話を含め紹介する ( 筆者注1) 。なお、わが国ではほとんど紹介されないオーストリアで最近時に毎年のように行われているISPのサーバー等の「蓄積情報の傍受法」改正の詳細な経緯については、別途改めて紹介する。  (筆者...

オーストラリアの科学者チームがレーザープリンター・トナーの飛沫による肺がん等健康被害の拡大を示唆

    Last Updated:Febuary 25,2022  わが国でも職場や公共交通機関等における喫煙対策規制が強化されてきているが (筆者注1) 、企業や筆者も含め一般家庭などでごく一般に利用されているレーザー・プリンター機がタバコや自動車の排気以上の微粒子物質を排出しているとの研究報告結果がオーストラリアの研究者グループにより発表された。この記事自体は本年8月はじめに 「ITmedia」 やCNET等でも訳されて簡単に紹介されている。  このような重要な環境問題を、2006年4月にすでに取り上げたのは わが国と韓国の研究グループ である (筆者注2) 。数少ないこの分野の研究を参考に世界的権威をもつ米国化学会(American Chemical Society) (筆者注3) の学会誌においてオーストラリアのクイーンズランド工科大学のリディア・モラウスカ(Lidia Morawska)博士グループが 発表 したことから世界の環境問題の関係者は注目している。同博士グループは偶然の機会を通じて大手プリンター・メーカー62台の新・旧レーザー・プリンターのトナー粒子の排出値を検査し、その結果、17台から大量の超微粒子が排出されており、肺や血管等への影響(発癌を含む呼吸器の炎症や心臓や血管系への影響)があると指摘したのである。 Lidia Morawwska氏  62台中最も対象機種が多かったヒューレッド・パッカード社は、国際基準に適合した品質管理を行っているとコメントしている。しかし、今回の調査にはわが国のプリンター・メーカーであるリコー、キャノン、東芝、京セラミタが含まれている。果たして、わが国のプリンター・メーカーや厚生労働省はどのようなコメントを出すのであろうか。喫煙やアスベストだけでなく事業所内における空気の環境保全問題が改めて問われる時代になったといえよう。  今回は、この論文発表を受けて英国ロー・ファームが出した同国の事業所内の化学物質からの曝露保護に関する法規制の現状およびEU(欧州連合)における従業員の化学物質の曝露限度値指標(Indicative Occupational Exposure Limit values) (筆者注4) の検討内容についてEU資料に基づき紹介する。 1.英国の印刷業者向け作業所内の健康保全規則と適用ガイダンス...