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3月, 2024の投稿を表示しています

生成AIにおける人間(人力)のキュレーター(Human curator)の役割の神髄を明確化した新論文の意義

   昨今、生成AIの功罪を巡る議論が高まる中で、消費者保護から見たマーケティング活動の問題に関し重要と考える点を例示する。 (1)テレビ番組等のサプリメント等スポンサー広告の多過ぎ、またインフルエンサー広告は全く無意味、(2)ネット広告・ターゲット広告のしつこさ(場合によっては詐欺広告類似)、(3)なりすまし詐欺メールの氾濫、(4)かつて一般に利用出来た商品テスト (注1) は皆無である。  このようなマーケィングの在り方に加えて、AI技術の普及は消費者にとってメリットはますます後退している。(3月29日付け読売新聞1面連載特集「情報偏食:AIが回答「多様性減少」第6部 求められる規範五最終回 参照)   ところで、ブロガー(コンテンツ・クリエイター)である筆者は、最近AIにおける 人間のキュレーター (Human curator) の役割の神髄を明確に指摘した海外レポートを読んだ。具体的にはジョーン・ウェステンバーグ(Joan Westenberg)氏のblog 「キュレーション(人力で情報を収集、整理、要約、公開(共有)すること)は知的な会話における最後の望みである」 およびグレグ.・ブックレス(Greg Buckles)氏 (注2) の eDiscovery Journal への最新投稿  「キュレーション : AI の事実の背後にある人間の意味(Curation – the Human Meaning behind the AI Facts)」 のうち、今回は内容から見て目から鱗が落ちるといえる前者のみ取り上げる。また、RSSの再評価などもわが国では珍しい点で特記事項にあたる。 Greg Buckles 氏  さらに、AIに関しコンテンツ・キューレーターやコンテンツ・アグリゲーターの役割等につき、わが国で詳しく解説したものは皆無である。今回のブログの後半でまとめた。  なお、後段で説明するコンテンツ・アグリゲーターの例について、筆者はこの例示には 異論 がある。【私見】として長年の筆者の法律ブロガーの経験から補追する。 Ⅰ. 「 AI キュレーションは、知的な会話 (discourse) における最後の望みである」   Joan Westenberg氏のレポート を 仮訳 する。なお、注書き、リンクおよび太字部は筆者の判断と責任...

第二次米国政府の責任ある企業行動に関する国家行動計画(U.S Government’s National Action Plan)の概要

   3月25日、バイデン・ハリス政権は、(1)人権と労働者の権利の尊重を強化および改善し、(2)グリーンエネルギーの利用を拡大、(3)汚職に対抗、(4)環境を保護、(5) 人権擁護者を保護、(6)ジェンダー平等と平等を推進し、(7)権利を尊重したテクノロジーの使用を促進するというコミットメントを反映した、責任ある企業行動に関する 「米国の第二次国家行動計画(NAP)(以下、NAPという)」 を発表した。  11月の大統領選挙を控えたバイデン政権の活動の一環ではあるが、その重要性から見て本ブログではその概要書を注補足の追加を踏まえ 仮訳 する。  バイデン大統領は史上最も労働者寄りの大統領であり、ボトムアップとミドルアウトから持続可能な世界経済を構築することに尽力している。 同氏とハリス副大統領は共に、高い労働基準を推進し、意思決定の場に労働者の声を反映させ、ここ米国内だけでなく世界中で不当労働行為に対する規則を執行することに取り組んできた。  今回の第二次行動計画(NAP)の発表は、複数の利害関係者の調整、会議、経済的インセンティブ、規制、その他の活動を通じて責任ある事業活動を強化するという政府全体の取り組みを反映している。 この NAP は、海外で事業を展開し投資する米国企業の 責任ある企業行動 (responsible business conduct :RBC)   (注1) に関するあらゆる問題に取り組んでいるが、特に、急速に変化するリスク環境における効果的なデューデリジェンスなどを通じて、人権を尊重するという企業責任への期待に焦点を当てている。  NAP は、企業が国際基準に基づいてバリューチェーン全体にわたって人権デューデリジェンス (human rights due diligence :HRDD) (注2)  を実施することに対する政府の期待を定めている。この報告書は、企業が利害関係者と協力して策定したセクター固有の基準の導入をさらに進める必要があることを強調している。この基準は、バリューチェーン全体にわたる人々に対するビジネスの影響に関する進捗状況を有意義に測定するための信頼できる指標を提供する。  NAP は、米国政府が RBC を促進および奨励し、企業による効果的な HRDD 実践の実施を加速するために、利害関係者...

フランスの競争委員会の超巨大IT企業Googleへの著作隣接権を中心とする法的チャレンジの経緯

   筆者はフランス競争委員会(以下、「委員会」という)のGoogleの市場支配的活動やフランスのAFP等報道機関等から出されていた著作隣接権(droits voisins))に基づく厳しい制裁措置につき 本ブログ で紹介した。  そこで引用されている 2020 年 4 月 9 日の委員会決定 、 2021  年  7  月  12  日の委員会決定 が大きなキーになっていることは言うまでもない。  しかし、後述する競争委員会 (注1) のリリース文は、必ずしもフランス以外かつ法律専門外の人には説明内容が十分でない。本ブログでは単なる生成AI翻訳に頼るのではなく、筆者なりに補足説明を加えた。(フランスの著作隣接権については (注2) 参照)。 1 .2020年4月9日著作隣接権(droits voisins):フランス競争委員会は、フランス報道関係者およびフランス大手メディアAFPから提出された同権利保護のための予防措置の要求を許可した   委員会のリリース を 仮訳 する。  委員会は、保護されたコンテンツの回復に関する「著作隣接権に関する法律」に基づき出版社や通信社に費用負担につき交渉するようGoogleに要請した。( 長塚真琴「フランスの 2019 年 7 月 24 日プレス隣接権法と対 Google 競争法事件」 が詳しく論じているが、執筆時点でやむなしといえるが差止命令(injunction; injonction )の意義も含め全く言及されていない。本ブロブでは (注5) であえて補足した)。 1.基本的重要事項  2019年11月、報道や出版社を代表する多くの組織・機関の同盟である“l’Alliance de la presse d’general information”(APIG) (注3) 、および 2019年7月24日の法律(LOI n° 2019-775 du 24 juillet 2019)( 報道機関および報道機関の利益のために関連する権利の創設に関する法律) の発効の際にGoogleが実施した慣行のフランスの大手メデイアである「Agence France-Presse(AFP)」 (注4) による 著作隣接権の権利保護請求につき競争委員会は、法が定める予防措置の手続きの枠組みの中...

欧州委員会のApple に音楽アプリ市場における支配的地位を濫用につき18 億ユーロ、フランス競争委員会がEUのメディア規制とAI利用をめぐる規制違反につきGoogleに2億5000万ユーロの罰金

   Last Updated :March 23,2024  これらについては、わが国メディでも紹介されているが、いずれの内容も巨大IT企業の独占的企業活動の法的規制策の効果的行動を論じるには不十分であるといえる。例えば、フランス独立行政機関である競争委員会(Autorité de la concurrence:わが国の公正取引委員会と解説しているのみで巨大 ITの活動実態や手法に応じた専門性を持ったメデイアやユーザーに対し意図的に透明性や自由にOSの選択肢を得られないようにしている点ならびにこれまでの交渉経緯等についての言及は皆無である。  そこで、本ブログは処罰根拠法や具体的な不遵守課題の内容 より具体的には1)EUにおける「顧客誘導禁止条項の意義」と役割、2)EUのデジタル分野の市場をより公平で競争力のあるものにするための EU の法律である「EUデジタル市場法(DMA)」の内容に関し、「ゲートキーパー」の義務と禁止事項に関する一連の客観的な基準を確立している点など、さらに3)フランス競争委員会(Autorité de la concurrence)が、Google が委員会の度重なる 著作隣接権の遵守 約束に違反するとともに、4)人工知能サービスツール(Gemini)を無断で構築する行為を行うなどの報道機関や出版社、または競争委員会にこれらの用途変更を通知しない等具体的な違法根拠をもとに責任追及を行ったかを解明・解説する。  なお、3月21日、米国連邦司法省は他の16人の州および地方の司法長官とともに、米国の独占禁止法 (注1) の1つであるシャーマン法第2条に違反してスマートフォン市場の独占または独占未遂を理由にAppleを相手に 民事独占禁止法訴訟を提起 した。(起訴状原本は ここ )本件とも関連する点があるが、本ブログで別途まとめたい。 Ⅰ.欧州委員会の Apple store の契約条件や音楽ストリーミング・アプリを配布する際に市場における支配的地位を濫用したとして EU 競争法違反に関する約束とその違反経緯   1. 2021 年 6 月公正取引委員会の解説 「欧州委員会は, Apple に対し,音楽ストリーミングサービス提供事業者に対する App Store の契約条件について,異議告知書を送付」 から引用する。重要...