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3月, 2024の投稿を表示しています

米国内外でのトランプ裁判の全体像について鳥瞰図かつ法的に詳しい解説に挑戦(その2)

  ■4つのトランプ裁判につきアクターも含め法的な意味で争点を整理する。 Ⅰ .  フロリダ州での連邦政府機密文書の違法な収集と保管裁判 1. 裁判概要  (刑事事件) ① 裁判所: フロリダ州南部地区連邦地方裁判所 裁判官 :US District Judge :エイリーン・キャノン(Aileen Cannon) Aileen Cannon 氏 検事 :ジャック・L.スミス連邦特別検事(Special Counsel :Jack L.Smith) (注2) Jack L.Smith 氏 ②事件の概要 政府機密文書の違法収集と保管問題   当初のDOJ起訴状 (全49頁)は、トランプ氏が大統領として米国が所有する何百もの機密文書を収集し、それらをホワイトハウスの段ボール箱に保管したと主張している。一部の文書には、米国と外国の両方の米国の核計画含む米国とその同盟国の軍事攻撃に対する潜在的な脆弱性、そして外国からの攻撃に対応して報復の可能性を計画している防衛および兵器能力に関する情報が含まれていた、と述べている。 Mar-a-Lagoのトランプ邸内の機密文書の山(起訴状に添付されている)  2023年6月8日、ドナルド・トランプ元大統領と彼の補佐官であるワルティン・T .ナウタ Jr. (Waltine Torre Nauta Jr.)氏はフロリダ州 Mar-a-Lagoのトランプ邸での機密文書の取り扱いの誤りに関連する容疑でフロリダ州南部地区の連邦大陪審により 起訴 された。取って代わる 起訴 2023年7月27日に封印が解除され、追加の被告カルロス・ド・オリベィラ(Carlos De Oliveira)が起訴され、トランプに対する証拠の改ざんに対する国防情報を故意に保持し, そして捜査官に嘘をついたとする3つの追加告発が含まれる。( 2023年7月27日付け最終起訴状 (全60頁))  なお、起訴状によると計36訴因のうち主たる訴因1~31は「全米の国防に関する故意の保管(Willful Retention of National Defense Information:18 U.S.C.§793(e))」 (注8) である。  より具体的に言うと2021年1月から、トランプがホワイトハウスを去る準備をしていたので、 連邦検事は、トランプ氏がホワイトハウスの...

米国内外でのトランプ裁判の全体像について鳥瞰図かつ法的に詳しい解説に挑戦(その1)

  Last Updated:March 17 ,2024  すなわち内外のメデイア記事の多くがトランプ裁判につき、誹謗中傷合戦を紹介しているものの、一部の米国のロースクールを除き法的点からの詳しい解析はほとんど行っていない。  メデイアではトランプ氏やトランプ・オーガニゼーションに関する裁判数は民事、刑事事件で計4つと書いているのが多数である。しかし、例えば、本ブログの第Ⅲ-2章で述べるとおりニューヨーク州司法長官レティシア・ジェームズは、不動産価値を不当に水増ししたとしてトランプ前大統領・オーガニゼーションに2億5,000万ドル(約3,725億円)の損害賠償と州内での事業の禁止を求めている。その裁判は2023年10月に始まった。この関連でR&D保険詐欺問題も取り上げられている  筆者はこのような背景にうんざりしつつ、改めて厳秘な意味で法解釈を試みようと考えた。例えば、本ブログで取り上げるジョージア州フルトン郡の検事が組織犯罪取締法である「同州RICO法(威力脅迫および腐敗組織に関する取締法(Georgia Racketeer Influenced and Corrupt Organizations :RICO) Act)」をもとにトランプ・オーガニゼーションを刑事起訴に持ち込んでいる。この起訴・裁判方法は従来のトランプ裁判法理では見られなかっただけに興味深い点が多い。これに関し、2021年1月6日の連邦議会議事堂占拠犯人らの起訴を含む裁判の一括審理の法的の有罪化の可能性等についても研究したい。(RICO法の問題点は本文や (注1) で述べた)  また、トランプ前大統領は英国では逆に原告となった裁判で、英国高等法院(High Court of Justice)はクリストファー・スティール(Christopher Steele)氏の会社に対する風評被害とデータ保護の権利侵害に対する訴えを 却下 し、スティール氏に訴訟費用として30万ポンド(約2,670万円)を支払わなければならないとの判決を2024年2月1日に下した。(この裁判で原告側が前述の米国RICO法を援用をして、却下されている点が興味深い)  さらにいうと大統領選挙と並行して進められるトランプ裁判特にスーパー・ロイヤーをうたい文句にトランプ元大統領の弁護士となった弁護士各位の弁論技術を見極め...

わが国のAI立法の在り方を見据える観点からEUのAI規則案(AI法案:Artificial Intelligence Act)の最終段階を改めて探る(その2完)

  Latest Updated:March  16, 2024 4.IMCO  および LEBEの リリース文「 Artificial Intelligence Act: committees confirm landmark agreement 」  以下、 要旨 を 仮訳 する。 【要旨】 ①汎用型人工知能に関する保護措置が合意された。 ②法執行機関による生体認証システムの使用の制限を加えた。 ③ユーザーの脆弱性を操作または悪用するために使用されるソーシャル・ スコアリングにつき AI の禁止。 ④消費者が苦情を申し立て、意味のある説明を受ける権利を保障する。  欧州議会の議員は、安全性を確保し基本的権利を遵守する人工知能法に関する暫定合意(provisional agreement)  (注11) を委員会レベルで承認した。  2月13日、域内市場委員会(IMCO)と市民的自由委員会(LIBE)は、人工知能法に関する加盟国との交渉結果を71対8(棄権7)で承認した。  この規則法案は、基本的権利、民主主義、法の支配、環境の持続可能性を高リスクの AI から守ることを目的としている。 同時に、イノベーションを促進し、ヨーロッパを AI 分野のリーダーとして確立することを目指している。 この規制法案は、AI の潜在的なリスクと影響のレベルに基づいて AI に対する義務を定めている。 (1) 禁止される AI アプリケーション( Banned applications )  この暫定合意では、①機密特性に基づく生体認証分類システム、②顔認識データベース用のインターネットまたは監視カメラ映像からの顔画像の対象外のスクレイピング、③職場や学校での 感情認識 (emotion recognition ) 、社会的スコアリング、予測ポリシングに基づく警察など、国民の権利を脅かす特定の AI アプリケーションが禁止されている。これらAIアプリは 人間のプロファイリングや特性の評価のみを目的としており、AI は人間の行動を操作したり、人々の脆弱性を突いたりする。 (2)  法執行機関への AI 法適用除外 (Law enforcement exemptions)  法執行機関による生体認証識別システム (Remote Biome...