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3月, 2022の投稿を表示しています

ロシアとウクライナ戦争の拡大阻止のための米国やNATOが北大西洋条約第5条(集団防衛)の適用について具体的な検討内容

   筆者は去る 3月7日付けのブログ の最後で米国やNATOが北大西洋条約第5条(集団防衛)の適用について具体的に検討を進めている旨、解説した。  この問題については、NATOにとって最後の切り札であり、もし適用を誤ると第三次世界大戦に突入するという大問題である。さらに国連の議決ともかかわる微妙な問題だけに慎重な検討がなされているようである。  この点につき 米国CNNが3月7日付け記事 で簡単な要約を行っている。重要な問題であり、ブリンケン国務長官も東欧の関係国を回る中で強く協調している点でもあり、その概要を紹介する。また、同長官のラトビア外相との共同記者会見でも明言していることから今回のブログであえて取り上げた次第である。 1.北大西洋条約第5条(集団防衛) 【外務省の解説】北大西洋条約第5条(集団防衛)欧州又は北米における一又は二以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなす。締約国は,武力攻撃が行われたときは,国連憲章の認める個別的又は集団的自衛権を行使して,北大西洋地域の安全を回復し及び維持するために必要と認める行動(兵力の使用を含む。)を個別的に及び共同して 直ちにとることにより,攻撃を受けた締約国を援助する。(外務省の解説から引用) 2. CNN記事  北大西洋条約第5条(集団防衛)に関する部分を抜粋、仮訳する。 (1) 北大西洋条約第5条(集団防衛) とは何か?  第5条は、NATOの1つのメンバー国に対する攻撃は、すべてのメンバー国に対する攻撃であるという原則である。これは、1949年にソビエト連邦のカウンターウェイトとして設立されて以来、30人のメンバー国 (注1) による同盟の要となっている。  この原則は、潜在的な敵対者がNATO加盟国を攻撃するのを阻止することを目的としている。第5条は、同盟全体の資源が単一の加盟国を保護するために使用できることを保証する。これは、同盟国なしでは無防備になるであろう多くの小国にとって極めて重要である。たとえば、アイスランドには常備軍がない。  米国は最大かつ最も強力なNATO加盟国であるため、同盟のどの国も事実上米国の保護下にある。  そのような武力攻撃およびその結果としてとられたすべての措置は、直ちに安全保障理事会に報告されなければならない。安全保障理事会が国際の平和と安全を...

米国ブリンケン国務長官のモルドバ共和国訪問の本当の目的とは?東欧の3か国のEU加盟申請と更なるロシアの拡大戦略に要注意すべき

  3月6 日、ロイター通信(日本語版)は「米国務長官がモルドバ共和国訪問、ウクライナ避難民の受け入れ称賛」したとある。しかし、その最大の目的はジョージア、ウクライナに続いてEU加盟申請したモルドバ共和国(以下、モルドバという)を米国としていかに後押しするかである。  ウクライナ以外は旧ロシア連邦の一部をなす経済的・政治体制的にも小国である。以下で述べるとおり、これら3か国のEU加盟について、EU内の議論の進展は極めて弱い。すなわち、これら3か国の加盟はドイツやフランスなどと異なり、今後EU加盟国にとって足かせになることはいうまでもない。  つまり、米国のロシアとの対峙はEUの将来にとって極めて重要な意味を持つ点をわが国としても十分理解しなければならないのである。  今回は、ウクライナ戦争が仮に停戦合意に至ったとしてもこれら2か国の動向がさらに大きな世界的不安定を招くという問題を改めて取り上げるものである。  また、ウクライナ戦争に関し、米国は独自にポーランドへの軍事支援(ロシア製MiG-29戦闘機 (注1) 、Su-57第5世代ステルス戦闘機 (注2) をウクライナに譲渡する)承認すると明言していたが、ウクライナ空軍は3月1日 facebookで、EU加盟国のブルガリアからMiG-29×16機とSu-25×14機、ポーランドからMiG-29×28機、スロバキアからMiG-29×12機を受け取ると発表、これはEU外務・安全保障政策上級代表のボレル氏が「ブリュッセルの資金でウクライナに戦闘機を提供する」と27日に発表したことを受けての措置だ。   しかし、実際は、ポーランド、ブルガリア、スロバキアはこの考えを拒絶し、ウクライナのパイロットはMiG-29を得ることなく手ぶらで去ったという記事もある。  また米国政府は3月1日、ロシアが隣国ウクライナに侵攻した後、欧州連合(EU)とカナダによる同様の動きを受けて、アメリカ領空からのロシア便の禁止を発表した。米国運輸省連邦航空局の命令は水曜日の終わりまでに発効し、ロシア市民である人物が所有し、認定、運用、登録、チャーター、リース、または管理されているすべての航空機の運航を停止した。ただし、ロシアは当然のことながら対抗措置を取った。  今回のブログは泥沼化するウクライナ戦闘問題と、周辺国のEU加盟の動き、さら...

OSCEはウクライナへのOSCE特別監視ミッションの国家ミッションメンバーの死を悼む

  2022年3月2日、ウィーンのヘルデン広場でのOSCE本部前の旗と黒い弔旗の写真  筆者の手元に3月3日、OSCEはウクライナへのOSCE特別監視ミッションの国家メンバー (OSCE Special Monitoring Mission to Ukraine: SMM )である マリーナ・フェニーナ (Marina Fenina)氏が, ロシア軍のハリコフで砲撃で死亡した旨の リリース が届いた。  筆者は OSCEについて2月22日の本ブログ 「プーチン大統領がウクライナのドネツクとルガンスクの特定の2地域を国家として承認するとした発表に対するOSCEウクライナ担当特別代表キヌネン特別代表の声明の意義」 で取り上げているが、今回のブログは、(1)OSCEの公表内容、(2)ロシアとウイクライナの停戦合意の重大な不安定性と 同合意の違反国(しかけた国)はいずれか、(3)SMMの役割、(4)ロシア国営放送であるタス通信の報道内容、等について、取り急ぎまとめたものである。 1.OSCEのリリース内容  OSCE議長兼ポーランド外相である ズビグニェー・ラウ(Zbigniew Rau) およびOSCEの ヘルガ・マリア・ット(Helga Maria Schmid:ドイツ) 事務総長は、マリーナの愛する人たち、そしてSMM全体に対し、次のとおり心から哀悼の意を表す。 ズビグニェー・ラウ(Zbigniew Rau)OSCE 議長 ヘルガ・マリア・シュミット(Helga Maria Schmid:ドイツ)事務総長  「心から哀悼の意と同情はマリーナの家族に向かう。マリーナはSMMチームの大切なメンバーであり、ウクライナの同僚たちは私たちのサポートを提供するために彼女の家族と密接に連絡を取り合っている。マリ-ナは、戦争地帯になった都市で家族のために物資を手に入れながら殺された。ハリコフやウクライナの他の都市や町では、ミサイル、砲弾、ロケット弾が住宅や町の中心部を襲い、女性、男性、子供など、罪のない民間人を殺害し、負傷させた。  国際社会全体、そしてOSCE全体からの繰り返しの呼びかけにもかかわらず、ウクライナに対する挑発的な軍事作戦は続いている。我々は、市民に死滅及び負傷を引き起こす都市部の砲撃の増加を強く非難し、ロシア連邦に対し、敵対行為の即時停止と有意義な対話を求め...