9月3日、筆者の手元に大手ローファームFox Rothchild LLP記事 「アイルランドのデータ保護委員会はWhatsappに2億2,500万ユーロ(約325億90万円)の罰金を科す:EU域内の事業者が知っておくべきこと」というレポートが届いた。なお、アイルランドのメディアによるとWhatappはDPCの決定を不服とし、今後アイルランドのHight Court (注1) または直接に欧州司法裁判所(CJEU)に持ち込むことになろうと報じている。 筆者は罰金額の大きさよりも、事実関係特にアイルランド情報保護委員(Data Protection Commission:DPC))の域内の情報保護機関との交渉不成立、さらに2021年6月3日にGDPBへの紛争解決プロセス(GDPR第60条、第65条)を発動させた点が気になった。 そこで、今回のブログは、(1)Fox Rothchild LLP記事にもとづきWhatsappの違法性判断の根拠の整理、(2)アイルランド・データ保護委員会(Data Protection Commission:DPC)の事実関係、経緯も含めた解説サイト内容の解析、(3)EUの仲裁機関であるデータ保護会議(EDPB)の仲裁内容、特にGDPR第65条や第60条の関係にかかる解釈問題などを公的資料等にもとづき論じるものである。 1.Fox Rothchild LLP記事 「アイルランドのデータ保護委員会はWhatsappに2億2,500万ユーロの罰金を科す:EU域内の事業者が知っておくべきこと」 の 仮訳 同記事では明確でないが、アイルランドの記事を読むと「具体的には、WhatsAppがGDPRの第14条 (注2) に違反していることが判明し、データ管理者はデータの収集方法と処理方法に関する十分な情報をデータ主体に提供する必要があると述べている」 アイルランドのデータ保護委員会は、Facebookが所有する人気メッセージングアプリWhatsAppに2億2,500万ユーロ(約325億900万円)の罰金を科した。 (注1-2) GDPRの対象となる企業の主な責務・問題点を次に示す。なお、わが国の保護機関である情報保護委員会も含め読者はこれらの問題指摘をどのように受け止める...
わが国のメディアの多くが海外メディアの受け売りに頼る一方で、わが国のThink Tankのレポートも中央官庁等の下請けが多い。筆者は約18年かけて主要国の法制研究、主要Think Tank、グローバル・ローファーム、主要大学のロースクール等から直接データ入手の道を構築してきた。これらの情報を意義あるものにすべく、本ブログで情報提供を行いたい。