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3月, 2021の投稿を表示しています

オーストラリアの大臣への直接情報公開と決定不服申し立てに制度にかかる個人情報保護法制面からの日豪比較

  筆者の手元に オーストラリア情報保護委員会事務局(Office of the Australian Information  Commissioner:OAIC)のFAQ形式のレポート が届いた。その内容は大臣あての直接公文書の公開請求および不服に関するOAICの対応等についてである。  筆者は、まず(1) OAICのFAQ内容を仮訳し、次に(2)わが国の情報公開法の運用に関するオーストラリアとの比較、すなわち、(ⅰ)わが国では大臣への直接公文書の公開請求はなしうるのか、(ⅱ)公開拒否決定に対する不服制度の制約、さらには(ⅲ)不服問題を審査する「情報公開・個人情報保護審査会]の委員構成等について問題提起するものである。 Australian Information Commissioner and Privacy Commissioner – Angelene Falk氏 1. 大臣 (minister) が保有する公文書の 公開請求権に関する FAQ (1)  国民等は 大臣の 公文書 書類にアクセスでき るか ?  はい、できる。  オーストラリアの 「1982年情報公開法(Freedom of Information Act 1982::FOI 法) 」 は、文書が公開開示から除外されない限り、すべての国民に「大臣の公式文書」にアクセスする法的に執行可能な権利を与える。  同法にいう「文書」という用語はFOI法では広く定義されており、(ⅰ)書面、(ⅱ)地図、(ⅲ)図面、(ⅳ)写真、(ⅴ)録音、(ⅵ)フィルム、(ⅶ)ビデオ映像、(ⅷ)モバイルデバイスやメッセージングアプリケーション上のメッセージ、(ⅸ)マイクロフィルム、(ⅹ)電子計算機用磁気テープ(computer tapes)、ディスク、DVD、ポータブル・ハード・ドライブに保存されている情報を含むが、これらに限定されない。  FOI法では、FOI請求を行う時点で存在する文書のみを要求することができる。ただし、公開請求後に作成された「文書」を求めることはできない。 (2)大臣の公文書とは どのようなものを意味するの か。  大臣の公式文書とは、機関の事務に関連する大臣の...

欧州司法裁判所(CJEU)大法廷判決の著作権者の権利保護を強化するフレーミングとインライン・リンクに関する内容と意義

  欧州連合の 司法裁判所(CJEU)大法廷 は、2021年3月9日、「フレーミング(framing)」または「インライン・リンク(inline linking)   (注1)   は、そのウェブ作成者が取った技術的措置を回避する場合は、著作権の不正使用であると判断した。  筆者は英国のロー・ファーム”Pinsent Masons”の ニュースレター でその内容を読んだ。ところで、本事案は2019年4月25日の決定によりなされたBundesgerichtshof(ドイツ連邦裁判所: 最高裁にあたる)からの EU運営条約(TFEU)第267 に基づく予備判決 の要請にもとづき、2019年5月21日に司法裁判所で審理が開始されたものである。  その内容が著作権がらみで極めて専門的であること、その事実関係、原告や被告の事業実態などが理解できないと、事案の本質を見失うリスクがあると考えた。  筆者としては若干手間がかかるが、あえて翻訳作業だけでなく補足説明を加えながら、今回の原稿を作成した。わが国の専門家による更なる解明を期待する  今回のブログは、(1)”Pinsent Masons”の解説, (2)SCL (the Society for Computers and Law)サイトの解説、(3)ドイツ大手ローファーム SKW Schwarzh  の弁護士(LLM)Margret Knitter氏のレポート 「フレーミングはウェブサイト上で著作権で保護された内容の埋め込みとして許されるか?(Framing: Is embedding of copyrighted content on a website allowed?」 が別の観点(2020年9月10日付け、 CJEU法務官 マチェイ・シュプナ(Maciej Szpunar)のOpinion を中心に論じている。順次解説を試みる。   なお、その内容に重複があることはいうまでもない。 ***************************************************************************** 1.”Pinsent Masons”のニュースレターの概...

中国の国家開発銀行(国家开发银行)が最初となるカーボン・ニュートラル・グリーン・ボンド(約30億7000万ドル)を発行

   筆者の手元に英国のローファーム”Pinson Masons”のレポート 「Chinese Development Bank issues RMB20bn green bond」 が届いた。 (https://www.pinsentmasons.com/out-law/news/chinas-central-bank-to-prioritise-green-finance)が届いた。そのレポートの著者は同ファームの香港事務所の弁護士 ジョン・イープ(John Yeap )氏 (筆者注1)(筆者注2) である。同氏は3月23日に 「China's central bank to prioritise green finance」 (https://www.pinsentmasons.com/out-law/news/chinese-development-bank-issues-rmb20bn-green-bond)も発表している。   今回のブログは24日のレポートを 仮訳 するが、関心がある読者は23日のレポートも併せ読まれたいれたい。  なお、弁護士ジョン・イープ氏はマレーシア人として多くの努力を重ねて今日の活躍の場にたっていると思われる。経歴につきやや詳しく紹介した。 【本文】  中国の 国家開発銀行(国家开发银行)   (筆者注3) は、再生可能エネルギープロジェクトのための資金を調達することを 目的 (https://www.renewablesnow.com/news/china-development-bank-places-maiden-green-bond-of-cny-20bn-735202/)とした最初のグリーンボンド、200億人民元(30億7000万米ドル:3346億3000万円)の債券を発行した。  これは「3年債」であり、2017年に開始された債券コネクト投資プラットフォームを通じて世界の投資家に提供された。  これは、世界銀行の気候債券イニシアチブ(CBI)  (筆者注4) によって認定された最初の カーボン・ニュートラル・グリーン・ボンド (筆者注5)(筆者注6) であり、炭素ピークおよびカーボンニュートラル目標に対処するための最大の発行済みグリーンボンドであると理解されている。  この債券は、 上海清...

中国の国家開発銀行(国家开发银行)が最初となるカーボン・ニュートラル・グリーン・ボンド(約30億7000万ドル)を発行

   筆者の手元に英国のローファーム”Pinson Masons”のレポート 「Chinese Development Bank issues RMB20bn green bond」 が届いた。 (https://www.pinsentmasons.com/out-law/news/chinas-central-bank-to-prioritise-green-finance)が届いた。そのレポートの著者は同ファームの香港事務所の弁護士 ジョン・イープ(John Yeap )氏 (筆者注1)(筆者注2) である。同氏は3月23日に 「China's central bank to prioritise green finance」 (https://www.pinsentmasons.com/out-law/news/chinese-development-bank-issues-rmb20bn-green-bond)も発表している。   今回のブログは24日のレポートを 仮訳 するが、関心がある読者は23日のレポートも併せ読まれたいれたい。  なお、弁護士ジョン・イープ氏はマレーシア人として多くの努力を重ねて今日の活躍の場にたっていると思われる。経歴につきやや詳しく紹介した。 【本文】  中国の 国家開発銀行(国家开发银行)   (筆者注3) は、再生可能エネルギープロジェクトのための資金を調達することを 目的 (https://www.renewablesnow.com/news/china-development-bank-places-maiden-green-bond-of-cny-20bn-735202/)とした最初のグリーンボンド、200億人民元(30億7000万米ドル:3346億3000万円)の債券を発行した。  これは「3年債」であり、2017年に開始された債券コネクト投資プラットフォームを通じて世界の投資家に提供された。  これは、世界銀行の気候債券イニシアチブ(CBI)  (筆者注4) によって認定された最初の カーボン・ニュートラル・グリーン・ボンド (筆者注5)(筆者注6) であり、炭素ピークおよびカーボンニュートラル目標に対処するための最大の発行済みグリーンボンドであると理解されている。  この債券は、 上海清...

「欧州中央銀行(ECB)が2022年に域内16銀行による欧州独自の汎ヨーロッパ決済システム構築の開始を公表」

  2010年10月9日、筆者は 「EUが2008年に新たに小口支払・決済手段の開始計画を提案」 をとりあげた。  その内容の更新を行った際、EUの主要銀行の16行がカード業界の巨人である米国の”Visa”や”Mastercard”、”PayPal”、”GAFA”や中国の”Alibaba :Alipay”  (注1) 等への対抗策として2022年にヨーロッパで新しい統一決済システムの稼働予という情報を得た。  この情報自体、 2020年7月2日の朝日新聞電子版 や ニューズウィーク日本語版 が、すでにある程度詳しく報じている。  特に後者は、キャッシュレス決済とビッグデータ、個人情報、信用情報は、密接につながっている等新たな問題である点も併せ論じている。この問題は”LINE”と同様、わが国でも本格的に論じたサイトは少ない。時間をとって改めて本格的に論じたいが、今回はヨーロッパの決済イニシアチブである欧州中央銀行(ECB)、 European Payments Initiative(EPI) の内容、新戦略についてできるだけ詳しく論じたい。  なお、元関係者として指摘しておきたいのは、EBCの新たな決済システムについてのイニシアチブをきわめて積極的、具体的にリードしているで点である。わが国の中央銀行である日本銀行にもこのようなリーダーシップを期待したい。 1.はじめに  2020年7月2日、フランスの金融専門サイト(Money Vox)は 「EUの16の銀行が2022年にヨーロッパで新しい統合汎ヨーロッパ決済システム構築を発表」 を報じた。  以下で概要を 仮訳 する。 1.EIP立ち上げ開始  ヨーロッパの16の銀行は、特に”Visa”や”Mastercard”などのカード業界の巨人に代わるものを提供することを目的として、インスタント・トランザクション・テクノロジー  (注2) に基づく新しい統合汎ヨーロッパ決済ソリューションを2022年までに立ち上げることなった。   このプロジェクトの関係銀行のうちフランスの銀行は、「7月2日、5か国(ドイツ、ベルギー、スペイン、フランス、オランダ)の16の主要なヨーロッパの銀行のグループが、ヨーロッパの決済イニシアチブであるEPIの将来の立ち上げへの道を開いた」と公表した。彼らの...