1月23日、オーストラリア犯罪委員会等による合同特別捜査班(Australian Crime Commission(ACC) Task Force :コードネーム”Eligo”)は、暴走族(bikie gangs)、麻薬カルテルや密入出国請負業者(有償で密入出国を請け負う者(people smugglers)に的を絞った特別捜査で5億8,000万豪ドル(約510億4千万円)相当の麻薬、現金2,600万豪ドル(約22億9,000万円)等を押収した旨 発表 した。 ”Eligo”は、2012年12月にオーストラリアのマネーロンダリング捜査専門部隊として設立され、これまで多くの捜査・押収実績をあげて有名であるが、なぜかわが国では一般的にはほとんど紹介されていない。 (注1) 今回、本ブログでこの問題をあえて取り上げた背景は犯罪者たちにはイスラム原理主義武装組織であるHezbollahといった国際テロ組織も含まれ、この問題の国際政治上の重要性が見逃せないからである。 また、同時にACCが公表した「マネーロンダリング解説コンピュータ画像(Money laundering infographics)」は資金洗浄の具体的な捜査の事例図解として、わが国も含む他国の捜査関係者にとっても有用な情報と考えたこともある。 1.ACCの発表内容の解説 (1) オーストラリア犯罪委員会(ACC) 、 オーストラリア連邦警察(AFP) 、 オーストラリア不正金融取引報告および分析センター (Australian Transaction Reports and Analysis Centre:AUSTRAC) の共同発表 ACCは、1月18日にシドニーで押収した570万豪ドルの現金の押収につながる1年間にわたるコードネーム”Eligo”が変質化させたマネーロンダリン捜査内容を1月23日に明らかにした。 ”Eligo”合同特別捜査班(以下「タスク・フォース」という)は、全豪ベースで活動する重大かつ組織化された犯罪における正規のものに代わる違法な送金手段や非公式の金銭価値の送金手段 (注2)(注3) を使用した犯罪の捜査のために2012年12月に設置された。タスク・フォースは5億8,000万豪ドル以上に相当する麻薬と金融資産(現金2,600万ドルを含む)を押収した。 タス...
わが国のメディアの多くが海外メディアの受け売りに頼る一方で、わが国のThink Tankのレポートも中央官庁等の下請けが多い。筆者は約18年かけて主要国の法制研究、主要Think Tank、グローバル・ローファーム、主要大学のロースクール等から直接データ入手の道を構築してきた。これらの情報を意義あるものにすべく、本ブログで情報提供を行いたい。