(写真は2012年5月21日筆者が撮った金環日食の写真) 筆者の手元には、英連邦諸国(the Commonwealth of Nations)であるニュージーランド最高裁判所から最新の主要判決が出ると都度、通知が来る。最近時のものとしては5月10日付けの判決(Thompson v The Commissioner of Inland Revenue)が届いた。 時間があるので改めて読み返してみたが、そもそも同判決の意義はいかなる点であるか、また下級審判決内容とのとのかかわりはいかなる点にあるか等につき模索してみた。 そこで見えてきた点は、わが国ではニュージーランドの裁判制度そのものに関する最新かつ正確な解説がないことである。これは研究者の怠慢というだけではすまない外務省等行政機関の手抜きともいえる。 いずれにしても、英国では、議会の上院である貴族院が、歴史的に最高裁判所の機能を担ってきた。この貴族院の司法機能は、国王の裁判所を源流とし、600年以上にわたって発展してきたが、2009年10月1日、最高裁判所(Supreme Court)が設置され、権力分立の徹底が図られた。一方、英連邦諸国であるニュージーランドの最高裁はその根拠法である 「2003年最高裁判所法(Supreme Court Act 2003)」 が2003年10月17日に成立、2004年1月1日に同裁判所が正式に設置、施行された。 (注1) 本ブログは、(1)ニュージーランドの裁判制度の概観、(2)最高裁判決原本速報の見方とリリース文の見方等につき概観し、最後にわが国ではほとんど論じられていない(3)ニュージーランド検視裁判所(Coroners Court)と検死制度のあり方に関する社会政策的課題を簡単にまとめた。 1.ニュージーランドの裁判所審級制度 簡単に言うと従来の3審制に2004年に最高裁が最上位の裁判所として設置されたことから4審制といえる。この間の歴史的な経緯の詳細については、広島大学荻野太司氏がまとめられた論文 (注2) があるので参照されたい。 ただし、正確に理解するには 「ニュージーランド裁判所専門サイト(Court of New Zealand)」 を公的な説明として参照すべきであり、ここではやや詳しく説明しておく。 (1)ニュージーランドの一般裁判所制...
わが国のメディアの多くが海外メディアの受け売りに頼る一方で、わが国のThink Tankのレポートも中央官庁等の下請けが多い。筆者は約18年かけて主要国の法制研究、主要Think Tank、グローバル・ローファーム、主要大学のロースクール等から直接データ入手の道を構築してきた。これらの情報を意義あるものにすべく、本ブログで情報提供を行いたい。