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3月, 2011の投稿を表示しています

警察庁が死因究明・検視体制の強化策の検討動向とわが国のフォレンジック体制整備への取組み問題

    2月26日、筆者は英国法務省の検死官規則(Coroners Rules 1984)の一部改正の背景と司法改革の観点からみた意義について 解説 した。(筆者注1)  また、FBIが現在稼動させている「統合自動指紋認証・検索システム(Integrated Automated Fingerprint Identification System:IAFIS)」の次期システムである 「次世代生体認証システム(Next Generation Identification System:NGI」 の構築計画の概要について、2007年12月27日の本ブログ( その1  , その2  )で簡単に紹介した(“NGI”については3月8日、FBIは初期動作能力確認が成功した旨 リリース しており、筆者は米国政府の本格的な生体認証データベース戦略につき別途取りまとめ中である)。  今回のブログの執筆にあたり、わが国の警察庁関係の資料を読んでいたところ、2010年1月から検討を行っている警察庁「犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方に関する研究会」の検討資料の中で英国(イングランド&ウェールズ)の 報告資料 (4頁)での2009年「コロナー法改正」に関する解説が目にとまった。  同研究会の検討状況についてはあまり知られていない問題であるが、「不審死」をめぐる問題意識が捜査・司法関係でも高まっていることは興味深い点であり、検討状況と課題につき概要をまとめた。  一方、検視や死因究明問題と極めて深くかかわる法科学問題として「フォレンジック科学(Forensic Science)」への取組み問題がある。  筆者は日頃から米国NIJ(連邦司法省・司法研究所) (筆者注2)(筆者注3) の “Forensic Sciences” 、FBIの “Forensic Science Communications”  、大学(米国マーシャル大学の “Marshall University Forensic Science Center” 等)の発信情報にも目を通すことが多いが、わが国として本格的な研究をすべき時期はとっくに過ぎているように思える。 1.警察庁「犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方に関する研究会」の検討概要 (1)設置目的およ...

米国連邦最高裁が「情報公開法」の解釈におけるいわゆる「法人のプライバシー権」の否定判決を下す

    3月1日、 米国連邦最高裁判所(U.S.Supreme Court) は、  「連邦通信委員会(FCC)」 と「AT & T Inc.」の間で争われていた 「連邦情報公開法(Freedom of Information Act:FOIA)」7(C)条 (筆者注1) にいう「personal privacy exemption」の解釈につき、裁判官の全員一致(8-0)で法人には適用しない旨の 解釈判決 を下した。(事件番号:No. 09-1279 )  筆者が、この判決を初めに知ったのは連邦司法省・情報政策局(Office of Information Policy:OIP)からの 「FOIA速報(FOIA Post)」 であった。  (筆者注2)  この裁判は連邦控訴裁判所という下級審判決に対する政府の最高裁への裁量上訴という事件で、その統一的解釈や判断が強く求められていたこと、さらに米国の主要プライバシー擁護団体  (筆者注3) やメディア、言論の自由擁護団体等から「法廷の友(Amicus Curiae)」が出されるなど話題の多かった裁判でもある。  今回のブログは、(1)同裁判の経緯や主な争点を整理、(2)プライバシー擁護団体など第三者による専門的意見である“Amicus Curiae”の内容、(3)この問題を迅速に報じた連邦最高裁  (筆者注4) やOIPの背景にあるオバマ政権の電子政府の中核となる「オープン・ガバメント政策」の意義や連邦政府のCIO等IT強化体制そのものについて解説を行うものである。 1.「FCC対AT & T Inc.」裁判と今回の最高裁判決の要旨 (1)FCCの&T社の告訴、裁判の経緯、争点と判決の要旨 (筆者注5)  コーネル大学ロースクールの 解説 では第3巡回区控訴裁判所判決等にもとづき事実関係を説明している。以下、要約する。 [事実関係]  “FOIA”は、連邦機関は一部適用除外の場合を除き、開示要求者に対し保有する記録を開示しなければならない。この開示を拒否したときは要求者は連邦地方裁判所に告訴することが出来ると定める。  本件において問題となった同法が定める開示の例外の場合とは、次の3つの場合である。 ①連邦機関は、特権的または機密性の高い企業機密...