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米国の低所得者給付金支払デビット・カード化完全移行と銀行非取引世帯救済対策の現状と課題(その2完)

  (3) 連邦預金保険公社(FDIC)を中心とした銀行界へ強力なイニシアティブを持った具体的調査や改善策   銀行口座を開設できないまたは十分な金融サービスを受けられない人々(unbanked and underserved populations)に対し連邦政府は銀行界へ強力なイニシアティブを取るべく連邦預金保険公社(FDIC)を中心とした具体的な調査や改善策が行われている。 A.2009年2月、FDICが 「非銀行口座保有者の口座開設に向けた銀行の努力に関する調査結果および改善勧告の要旨(FDIC Survey of Banks’ Efforts to Serve the Unbanked and Underbanked)(12頁)」 を発表 ①銀行による金融教育および奉仕活動 ・77%の銀行は自身の取引市場における非銀行取引先の重要性を理解しているが、これらへのサービス拡大をビジネス戦略の優先項目としているものは18%以下である。 ・非銀行取引先に対する教育方策として最も効果的なものの順位を選ぶと、金融教育集会が第一で、次いで消費者新団体等他団体による勉強会への参加や奉仕活動への参加をあげている。 ・63%の銀行は非銀行取引者向けの教育教材を用意しており、小冊子やパンフレットを作成している。 ・37%の銀行は非銀行取引者向けのサービス拡大に向けた他団体主催の勉強会に参加している。 ・53%の銀行は非銀行取引者向けの金融教育集会を開催している。 ・58%の銀行は2007年中に高校やコミュニティ主催のイベントにおいて金融教育や奉仕訪問を実施している。 ②銀行にとって非銀行取引先への挑戦課題と理解される項目 ・優先順位をつけさせたところ、第一に収益性、次に規制監督機関対応や詐欺懸念であった。 ③銀行の小売サービス中心店舗やその戦略上の非取引先のアクセスしやすさの改善 ・59%の銀行は午後5時以降や土曜日の午後1時以降営業時間の延長を実施しており、また52%の銀行は外国語担当者を雇う等外国語能力の強化を図っている。 ・64%の銀行が過去5年間に非銀行取引者向けにインターネットバンキングやモバイルバンキングの利便性の向上につきPRしている。57%の銀行がATMを店舗外ATMを設置し、さらに43%は 臨時(出張所)店舗ATM  を追加している。うち13...

米国の低所得者給付金支払デビット・カード化完全移行と銀行非取引世帯救済対策の現状と課題(その1)

  Last Updated:February 25,2021    2010年4月19日、連邦財務省ティム・ガイトナー長官( Timothy  F. Geithner) は財務省と数百万の個人や民間企業を取り込む結果として連邦経費4億ドル(約364億円)の節減および1,200万ポンド(約540万トン)の紙の節約をもたらすことが期待される大規模な弱者救済給付金プリペイド・カード・システム(Direct Express Debit Card)や企業の電子納税の普及拡大や確実な資金振込の徹底化策計画を 発表 した。 Timothy F. Geithner 氏(2021.2現在はPrivate equity firm( 未公開株式投資会社) . Warburg Pincus の社長である  )  また、本計画によりコスト削減、関係者向けサービスの向上、さらに紙(政府発行小切手)から電子取引への移行により公金の受給者や納税者にとって信頼性、安全性やセキュリティを高めるとともに財務省の環境問題に対する影響を考慮することになるとしている。  今回拡大の対象となる“Direct Express Debit Card” は、連邦財務省が2008年6月10日にその導入を 公表 したものである。筆者なりに調べたが、なぜかわが国では詳しい解説が見当たらない。そもそも米国の社会保障制度のうち、①社会保障における障害(Social Security disability insurance program :SSDI)、②補足的保障所得(SSI)についての法的にみた正確な解説がないのである。  筆者は連邦社会保障庁(Social Security Administration:SSA)  (筆者注1) のサイト等で改めて調べてみた。   (筆者注2)  保険、労働問題や社会保障等を専門とするウィンスコン州の ピッツ法律事務所の解説 は、米国の連邦SSDI等の適用条件の厳しさ   (筆者注3) や手続きの特異な複雑さを指摘している。適用申請手続には原則弁護士はつかないが、請求が地方の社会保険事務所から却下されたときの再審査請求を行政法審判官(Administrative Law Judge)  (筆者注4) に提訴するときに弁...

米国の連邦預金保険公社による暫定保護限度額引上げや全額保護措置の概要と今後の行方

    金融関係者で本ブログを読んでいる方の中には、“FDIC's Electronic Deposit Insurance Estimator(EDIE)” のことを知っておられる方もあろう。わが国の預金保険制度の原型となる米国の預金保険制度は期間限定ながら、今、金融危機の中で極めて異例な保護措置を実行している。  今回のブログは、このような前例のない保護措置を取らざるを得ない米国の金融リスク、信用不安の実態等をあらためて整理するものである。  なお、2009年5月21日付けでわが国の預金保険機構(DIC)のHP調査(海外事情・預金保険研究)において 「米国:預金保険制度の変更を含む法律が成立」 という標題で「預金保険制度の変更としては、(1)臨時的な保護限度額引上げ期間の延長、(2)預金保険基金回復計画の回復期限の延長、(3)預金保険機関の借入限度額の引上げ、(4)連邦預金保険法に基づくシステミック・リスク・エクセプション (筆者注1) (筆者注2) 実施により損失が生じた場合の特別保険料の賦課対象の追加、賦課基準の弾力化」にかかる立法措置( 住宅ローンの差押回避と利用促進を意図した法律(Helping Families Save Their Homes Act of 2009:S.896)) の概要を説明している。  しかし、今回取り上げる(1)の変更内容についての詳しい説明は、その後の預金保険機構サイトでも行われていない。今回、筆者はURLのリンク先を見直して国立国会図書館サイトにアーカイブされていることに気が付いた。 (筆者はかつて預金保険機構は出向先であった)   1.FDICの預金保護限度額の引上げ措置および臨時措置の延長にかかる経緯  米国では2008年10月3日  「緊急経済安定化法(Emergency Economic Stabilization Act of 2008(EESA):H.R.1424)」 が成立し、同年10月8日にFDICは、EESAに基づき、預金保護限度額を 10万ドル(約930万円)から25万ドル(約2,325万円)に引き上げたと 発表 した。また非金利の当座預金等についてはFDICによる「暫定流動性保護プログラム(temporary Transaction Account Guarantee Program...