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海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(No.14)

  Last Updated: March 5, 2021 わが国のメディアも欧州疾病対策センター(ECDC)が毎日更新・発表している新型インフルエンザの世界的な感染拡大情報に注目している。本ブログのN0.12で紹介したとおり、WHOが7月22日以降各国別の感染確認件数統計の公表を中止し、WHOの世界6つの地域事務局(regional office)(アフリカ、アメリカ、東地中海、欧州、東南アジア、西太平洋)からの累計確認数と死者数の集計方式に改定したことが、ECDCの個別国情報の意義があらためて浮かび上がった理由の1つといえよう。  しかし、ECDCも従来独自に集計してきたEUやEFTA加盟国以外の各国の確認済累計感染者数の公表につき「8月9日」をもって中止している。その最大の理由は、ECDCの説明によるとわが国と同様世界の主要国が感染数の公表が出来ていないという最悪の状況になったことであろう。さらに疫学上の重要課題といえる監視情報の混乱の実態は、ECDCの独自の統計とWHOの集計時の誤差の解釈のあり方の問題も浮かび上がってきた。例えば、8月13日現在のWHOの世界統計では累積確認感染者数は182,166 人、死者は1,799人である。一方、ECDCが8月22日に公表したEU加盟国(EFTAを含む)感染者数は42, 099人(うち死者は80人)、その他の国々の感染者数は208,496人(うち死者は2,459人)である。世界全体では累計確認感染者は250,595人、死者は2,539人である。 (筆者注1)  一方、わが国の厚生労働大臣のコメントを待つまでもなく、新型インフルエンザの本格的な流行は本年秋以降といわれていたが、実際は夏から始まっている。都道府県ごとの集計でみた感染発生事例の累計疑似症患者数は8月16までの2009年第33週は1.69(患者報告数:7,750)となり季節性インフルエンザの全国的流行開始指数値(1.00)を上回った。第33週の受診患者数は約11万人と推計され、そのほとんどが新型インフルエンザであると国立感染症研究所は推定している。8月18日までの累計入院患者数は230人である。  本文で述べるとおり、世界的な感染拡大傾向はこの数週間は従来拡大が続いていた北半球の北米や英国等は低下傾向にあり、わが国の増加傾向はアジア地域や中南米の傾向に...

海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(N0.13)

  Last Updated:March 5,2021  新型インフルエンザの感染リスクは、わが国においても8月15日に沖縄県での57歳の基礎疾患を持つ男性の初の死亡例、複数の年少者の急性脳炎重症化例、坑ウイルス薬タミフル耐性さらに学校が再開される秋以降の不安材料が引続き出始めている。  特に9月になるとすぐ現実の問題となる「新型インフルエンザと休校・学年閉鎖等の対応」である。本ブログでもしばしば指摘しているとおり、わが国の国立感染症研究所等の分析結果を待つまでもなく、年齢別に見た感染拡大の年齢層の特定化や幼稚園から少中高等学校等における集団感染が大きなリスク要因であることは言うまでもない。  この問題の保健分野の責任機関である厚生労働省から関係する事務連絡は、 本年6月19日付けの「『医療の確保、検疫、学校・保育施設等の臨時休業の要請等に関する運用指針』の改定について」 のみであり、また文部科学省の関連事務連絡は保健所と学校との報告・連絡体制  (筆者注1) であって、学校管理者がどのような判断基準に基づいて生徒、職員や父兄に接したらよいか、その具体的指針となるものは一向出て来そうにもない。  今回のブログは、米国疾病対策センター(CDC)が本年秋以降の準備として公表した「米国の公的無償教育機関(K-12 grades(幼稚園から高校) (筆者注2) の管理者向け対応ガイダンス」等の要旨を紹介する。  これらの新型インフルエンザの拡大阻止に向けた具体的な対応上の参考情報として、わが国の「国立感染症研究所」は従来からサイト上で「CDCによる情報―各ガイダンス・ガイドライン」を公表している。いずれ本件についても公表すると思われるが、時間的余裕もないので急遽取り上げる。  なお、米国政府の新型インフルエンザ専門サイト“Flu.gov”は「学校の新型インフルエンザ対応」問題を“School Planning”として取り上げて関係者の取組み課題を整理し、かつ本年秋以降の季節性インフルエンザの流行とも抱き合わせで内容更新を図っており、今回その更新項目も併せて紹介する。いずれにしても国民・関係者への包括的な情報提供は欠かせない点を改めて強調したい。 (筆者注3) 1.“Flu .gov”サイトの教育関係者向け事業継続計画更新の主要項目  今回のサイト内容の更新...

海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(N0.12-2)

  Last Updated : March 5, 2021 4.世界の大規模感染拡大国の最新発表情報  欧州疾病対策センター(ECDC)や 汎米保健機関(PAHO)および各国の保健機関が公表している累計確認感染者数および死者数の最新情報を紹介する。また、各国の関連サイトで特記すべき点も併せて記した。なお、今回の数値は引続き急速な感染拡大している現状を理解できるよう7月6日のWHOの公表値との比較を行った。しかし、ECDCは毎日更新データを公表しているが、PAHOは週間ベースでの更新であるなど各機関によって比較方法が異なるため、基準日の設定が難しく、今後は本ブログでは各機関の比較方法に準拠することとした。 (1)米国  7月24日をもってCDCは各州からの報告に基づくH1N1の確認感染者数の公表を停止し、その代りに新型インフルエンザと季節性インフルエンザの感染状況を追跡する監視システムを導入した。その詳細についてはCDCサイトの“H1N1 Monitoring Question & Answers”で確認できるが、主な新型インフルエンザ監視システムは次のとおりであると説明されている。  なお、次に述べる全米的モニタリング体制の原型はすでに1999年CDCが発行した「あらたなインフルエンザの世界的流行(パンデミック)の発生に備えて地方当局が対策を立案するための指針(Pandemic Influenza :A Planning Guide for State and Local Officials) 」で出来上っている。パンデミック時を想定し、ウイルスの検査体制の効率化といった理由だけでない米国らしい長期的かつ本格的な取組み姿勢があると判断するのは筆者だけであろうか。 (筆者注8) A.次の内容のモニタリングによるウイルスの監視 ①インフルエンザの陽性について試験を行った標本の割合 ②循環型インフルエンザの原型と亜型 ③坑ウイルス薬への耐性 ④新ウイルス種の出現 B.疑似インフルエンザに関する見張り役ボランテア医師(外来患者数当りの新型インフルエンザ様疾患患者を各年齢層別に報告)ネットワーク C.成人と子供に分けて実験室で確認されたインフルエンザ感染者の入院者の監視 D.インフルエンザの地理的な感染拡大 E.全米122都市の死者の原因をインフルエンザと肺...

海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(N0.12-1)

  Last Updated: March 5,2021  WHOが新型インフルエンザA(H1N1)の世界的大流行宣言(pandemic (H1N1)2009)を行った後、各国の感染者数や死者数が大幅に増加しているにもかかわらず、世界的感染リスク問題について国際機関が正確かつ疫学面の専門的な情報を一元的に提供する機関がなくなるというまさに筆者が従来から指摘してきた問題が現実となった。 (筆者注1)  すなわち、WHOは本ブログで本年4月30日以降筆者が最優先で取り上げてきた新型インフルエンザの感染リスク(重症例や死者)の情報において先導的役割を担ってきた。しかし、本来一番の役割が期待された「フェーズ6宣言」以降は急速にその機能・役割が縮小し始めているように思える。  その例証として次のような点があげられる。(1)WHOは加盟国の保健機関からの情報に基づく正確なデータを数日おきに公表してきたが、加盟国が調査や公表を中止していないにもかかわらず、その公表の廃止を宣言した(地域の問題とするにはH1N1の世界的感染リスクはあまリにも大きい)、(2)従来行ってきた定期的な公表に替えて「政策意思決定覚書(briefing note)」 (筆者注2) が7月8日に第1号が出された後、合計7回出されているが、当初読んだ際、北半球が冬季に入る第2波感染拡大を阻止するための世界的な取組みの現状分析とはいえない内容と感じた。しかし、その後の最近の“briefing note” が取り上げているテーマを読む限り、主要国の秋に向けた坑ワクチンの製造準備にむけた体制整備問題がWHO等国際機関の重点課題になっていることは否めない。  筆者は多忙のためしばらくの間WHOの活動をフォローしていなかったが、7月31日に米国保健福祉省(HHS)から受信したメールでWHOがまとめた新型インフルエンザH1N1の世界的感染拡大状況(7月27日付)のデータの更新(update 59)を確認したことからあらためてWHOの取組み姿勢が変わったことを知った。 (筆者注3)  すなわち、WHOのデータ収集・公表は個別国の集計方法から今後多少の時差はあるもののWHOの世界6つの地域事務局(regional office)(アフリカ、アメリカ、東地中海、欧州、東南アジア、西太平洋) (筆者注4) からの集計という方...