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オーストラリアの新型インフルエンザA(H1N1)感染者数の急増の背景と対応の実態

    Last Updated : March 5.2021 わが国では世界的に見た感染者数の増加が頭打ち等と言う記事が一部出始めている。世界第4位の感染者数をかかえる国の正しい意見とは思えないが、世界的な観光国であるオーストラリアでは現地時間5月25日オーストラリア・シドニー港(NSW州)に25日に入港した大型クルーズ船 「パシフィック・ドーン(Pacific Dawn)号」 に乗っていたオーストラリア人の男子2人(ともに5歳)が新型インフルエンザA型H1N1の検査で陽性を示したため、同船の旅客全員の1,800人以上が下船し、7日間の自宅またはホテルでの隔離措置を実施するよう保健当局から要請を受けた。  今回のブログでは、まだわが国のメデイアではほとんど紹介されない(1)観光船におけるオーストラリアの集団感染とその対応の詳細、(2)海外からの帰国学生の監視や学校閉鎖さらに(3)観光国である同国のH1N1をめぐる対外的広報体制の問題点を指摘する。 1.オーストラリアの最新感染状況  5月27日AEST(世界標準時(グリニッジ時)+10時間(日本は9時間) 6時現在)の確認感染者数は 50人 である。州別に見ると8州のうち発生州は次の6州である(感染が確認されていないが疑いのある人数は北部準州(1人)、タスマニア州(1人)である)。 ・オーストラリア首都特別地域(ACT)1人(うかがわし検査中1人) ・ニュー・サウス・ウェールズ州(NSW)16人(84人) ・クイーンズランド州(QLD)7人(10人) ・南オーストラリア州(SA)2人(1人) ・ビクトリア州(VIC)23人(33人) ・西オーストラリア州(WA)1人(1人) 学校閉鎖はビクトリア州で3校、南オーストラリア州で2校、計5校である。 2.ニュー・サウス・ウェールズ州でのクルーズ船集団感染の状況と州保健省の対応内容  NSW州保健省のケリー・チャント(Kerry Chant)局長、同省サイトおよびメディア“Herald Sun”に基づいてまとめると次のとおりとなる。なお、当局の説明はかなり時差がある。これらの情報については連邦ベースと州の保健省サイトの双方を見ながら最新かつ正確な情報を入手しなければならない。 NSW州保健省組織図とKerry Chant局長 (1)クルーの乗客中130人が呼吸器系...

米国が高齢者医療保険や低所得者医療補助制度悪用詐欺阻止および法執行活動チームを立上げ

    Last Updated :March 12,2020  米国連邦保健福祉省(Health and Human Services:HHS)は、5月20日に標記専門チームの立上げを (筆者注1) 発表 した。  オバマ新政権の柱となる政策に、高齢化社会対策と医療保険制度の抜本的改革 (筆者注2) であるが、国民や議会の支持を得るためには一方で数兆円といわれる同制度を悪用した詐欺行為や財政基金使途の濫用等の阻止が必須という事情がある。  今回のブログは、わが国ほどではないが高齢化が進む米国社会の取組みと現行の2つ公的医療保険制度等を悪用した詐欺行為の手口の実態を理解するとともに、わが国として将来を見越し取組むべき課題を整理することにある。  なお、筆者は米国の社会医療政策の専門家ではない。しかし、従来から本ブログで適宜紹介してきているとおり、連邦関係機関の公式リリースや新規情報はほぼリアルタイムで把握できる。ウェブ上で検索できる範囲内の基本的情報 (筆者注3) に筆者が確認した情報を追加しつつ説明を行う。   1.現行の米国の高齢化社会対策に関する基本的法律および施策・財政面の課題 (1)根拠法  1935年社会保障法(The Social Security Act of 1935:米国の社会保障・高齢社会対策の基盤となる法律)。米国の社会保障制度の中核は連邦政府が直接経営する「老齢・遺族・障害・健康保険(Old-Age,Survivors,Disability,and Health Insurance:OASDI)」であるが、同法の改正を含む高齢化社会対策法は次の4つであり、各州が行う施策の展開もこれらの法律に基づく。 (筆者注4) 「1965年社会保障法の改正(Title XVIII and Title XIX of the Social Security Amendments of 1965 )」  “Medicare” および “Medicaid” 「1965年高齢米国市民法(the Older Americans Act of 1965)」 「1967年雇用年齢差別禁止法(The Age Discrimination in Employment Act of 1967)」 「1990年障害者保護法(the Americans with...

WHO事務局長マーガレット・チャン氏が新型インフルエンザ大流行について再度警告

     新型インフルエンザA(H1N1)の弱毒性について、わが国のメディアが悪しき影響を受けているが、感染者数が圧倒的に多い米国の疾病予防管理センター(CDC)において “Novel Infuluenza A(H1N1)” (筆者注1) と言う表現やその危険性が季節性インフルエンザと同程度といった解説が定着し始めている。CDCが持つ世界的な影響度から見るとこのような評価を現時点で出すことはいかがと考え、参考として欧州疾病予防管理センター(ECDC)や欧州委員会「健康・消費者保護総局(the Directorate General(DG) for “Health and Consumers”)」 (筆者注2) 等の関係サイト等を見てみたが、”novel“は国別感染状況の地図の標題で出てきたのみである。  その問題はさておき、本題に入る。 5月18日にWHO事務局長マーガレット・チャン博士(Dr Margaret Chan Directorate-General of WHO)が第62回世界保健機構(WHO)総会(Sixty-second World Health Assembly)における開会スピーチ の内容は、国際機関の立場や現実の世界が今取組むべき多くの課題を取り上げており、また世界的に深刻な大流行の兆しを見せる新型インフルエンザ問題について医療専門家としての警告をならすものである。 (筆者注3)  今回の総会の主たる議題がまさにフェーズの引上げの是非であり、英国やわが国の主張である引上げ反対とWHO事務局の意見調整である点は報道されているとおりであろう。  わが国の関係者は改めて強い関心をもって世界的視野の問題を理解すべきと考え、専門外ではあるが 仮訳 を試みる次第である。   〔スピーチの 仮訳 〕(筆者の責任において補足的な訳語を追加した) 過去30年以上、世界は平均的により豊かになった。人々はより寿命が延びより健康的な生活を楽しんでいる。しかし、これらを助長した傾向には残忍な現実が隠されている。今日、同一国内や国家間における所得レベル、就業機会、健康状態の差はこの最近の歴史上見ないほど拡大している。我々の住む世界は均衡が取れていないし、特に健康の問題では最もこのことは顕著である。現在の経済の下降は豊かさや健康を低下させるが、とりわけ開発途上国では...

米国の連邦裁判所規則等の期限改正法案が成立、議会の審議のフォローアップ・データベース

  Last Updated: March 5,2021  2009年5月10日未明に米国連邦裁判所サイト“U.S.Courts”( 筆者注1) からオバマ大統領が5月7日に 標記法案(H.R.1626) (筆者注2) に署名し、成立した ニュース が届いた。この法案は連邦裁判手続に関する29の連邦法の改正に関するもので、米国でも裁判官や弁護士という裁判実務家には関心が高い問題であるが、一般人には極めてなじみが薄い問題である。  今回あえて取り上げた背景は法案内容の正確な理解とともに、このようなメディアもほとんど問題としない法案の内容について審議過程を調べようとしたら、わが国ではどれだけの時間がかかるであろうか、一方、米国ではどうかといった比較制度的な問題意識から取り上げるものである。  筆者から見ると、本会議だけでなく委員会等における法案上程の背景や審議状況をリアルタイムかつ正確に把握できることは、民主主義国家では当然であり米国もその例外でない。   1.本法案提出の背景となる連邦司法会議(Judicial Conference of the United States)の「裁判過程における期間計算に関する規則」の改正および「2009年制定法上の期限計算に係る技術的修正に関する法律(the Statutory Time-Periods Technical Amendments Act of 2009)」(H.R.1626)の可決 (1)この法案提出の契機は、2008年9月16日連邦司法会議(Judicial Conference of the United States) (筆者注3) (筆者注4) において、連邦裁判手続における期間計算に関する以下の4つの裁判所規則(書式を含む)の改正案が採択されたことである。  また、同会議は改正案につき 1934年連邦最高裁判所規則制定権法(Rules Enabling Act of 1934) (筆者注5) に基づき、連邦最高裁に移送し、制定・公布するものである。 ① 連邦控訴規則(Federal Rules of Appellate Procedure;FRAP) ② 連邦破産訴訟規則(Federal Rules of Bankruptcy Procedure;FRBP) ③ 連邦民事裁訴訟規則(Federal ...

注目の新検索エンジン“WolframAlpha”データ版の客観的評価について

    Last Updated : March 5,2021  最近わが国のブログで紹介され始めた話題  (筆者注1) で、5月18日にサービス開始する “WolframAlpha” と“Google” はどちらが検索エンジンとして機能面等で優れているか、また“Google”の世界戦略はどのような影響を受けるのかといった問題につき各方面から解説が行われている。  5月11日に筆者に届いたドイツのメディア “SIEGEL ONLINE”(国際版) (開く前にプライバシーポリシーを承認すること)を読んでみると、ドイツらしいロジカルかつ辛口の記事が目に留まったので紹介する。Google自体話題性の多い企業であること(米国型企業戦略でもある)は言うまでもないが、“SPIGEL”が比較において使用した項目は単にわが国等関係者が従来指摘している以上に重要な視点が含まれているという判断から専門外ではあるが、あえてとりあげるものである。  なお、“SPIGEL”の記事では10項目に分けて比較等を行っているが、そのうち主要な7項目のみ取り上げる。 1.“WolframAlpha”の開発者の本当の開発目的は何か  米国の理論物理学者兼実業家 Stephen Wolfram   (筆者注2) が開発した検索エンジン“WolframAlpha”は、“ Google の 殺し屋”ではない。また検索エンジン機能だけでもない。「コンピュータ自身による知識エンジン(computational knowledge engine)」すなわち彼自身が自ら主張する「コンピュータの使用とウェブのための新しい理論的枠組み(a new paradigm for the use of computers and the Web)」である。その最終的な目標はコンピュータの先駆者が1950年代に指摘した約束(コンピュータ自身が質問し答えを出させる)の達成である。彼は数学パッケージソフトウェア“Mathematica”を開発した。同ソフトは、統計学者、科学者や数学者が課すあらゆる数学上の普遍的問題解決ツールである。同プログラムは膨大な処理能力を必要とするため、いくつかのコンピュータ雑誌がPCの容量と能力をテストするのに利用するほどである。 Stephen Wolfram 氏  “Wolfr...

米国の連邦議会行政監査局(GAO)が個人情報再販業者に対する機密情報安全性監督の強化策を勧告

  Last Updated: March 5.2021 〔再登録にあたり〕  本ブログは2006年9月24日(木)にgooブログにアップしたものである。しかし、数年を経過し法改正や内容の陳腐が目立つ。このため必要な範囲で内容の更新・見直しと併せ、新たにリンクを張るなど読みやすさにも配意して改訂を行った。   また、2021年3月5日の筆者は更新にあたり、GAOサイトを再度検証したところ2013年9月25日に再度、上院 「 銀行、住宅・都市問題委員会」に 「INFORMATION RESELLERS:Consumer Privacy Framework Needs to Reflect  Changes in Technology and the Marketplace」勧告報告 を行っていることが判明した。ただし、今回は内容にはあえて言及しない。 米国連邦議会行政監査局(United States Government Accountability Office;GAO) は、2006年6月26日に開催された連邦議会上院「銀行、住宅・都市問題委員会(Committee on Banking ,Housing and Urban Affairs ,U.S. Senate)」において、連邦や州の金融監督機関が行う“Gramm-Leach-Bliley Act;GLBA”等個人情報保護に関する重要な法律の運用に関し、最近急成長しつつある個人情報の再販事業者(Information Resellers) (筆者注1) が行うべき安全対策に関して、有効な監督機能を果たしていないとする 勧告報告(   Personal Information:Key Federal Privacy Law Do Not Require Information Resellers to Safeguard All Sensitive Data )  を行った。  GAOの活動や権限について、本ブログでも数回取り上げたことがあるが、GAOの連邦議会への発言力すなわち上院・下院議員への影響力は極めて強く、また取扱う問題の範囲が広く米国の行政機関への横断的な影響度は大といえる。  特にGAO報告の特徴は、関係企業、監督機関、消費者等からの情報収集が徹底...

米国の全米気象サービス局(NWS)の非気象に関する「緊急情報通知システム」の運用開始

     5月6日に米国FEMA(連邦緊急事態管理庁)  (筆者注1) から届いたニュースの中で2009年4月30日から運用開始し、5月、6月は段階的運用を拡大するとのニュースがあった。気象学や災害問題の専門家でない筆者は「何のこと」と思いつつ、「非気象」の緊急メッセージ(non-weather emergency messages)という言葉が気になり自分なりに調べてみた。  そこで見られたのは国家としての自然災害以外に対する社会的な危機情報の安全、効率的な情報収集による危機管理情報ネットワーク拡大とインフラ整備である。商務省全米海洋大気庁(National Oceanic and Atmospheric Administration;NOAA) (筆者注2) 気象サービス局(National Weather Service:NWS)が中心となって取組んでいる新たな国家プロジェクトである。 (筆者注3)  また、5月6日にFEMAは大規模災害緊急事態通報システム・サイト “Disaster Management”ポータルに “HazCollect” (All-Hazards Emergency Message Collection System)を追加しており、当該“HazCollect”の運用州の拡大予定やQ&A等が詳しく説明されている。 (筆者注4)  なお、HazCollectは20015年4月1日にNWS本部の改組に伴い、内容が変更されている。  今回のブログでは単に“HazCollect”の役割や目的だけでなく、情報化社会における大規模災害以外についても正確かつ迅速な緊急情報伝達のあり方について米国の取組みや問題点について解説を試みる。  なお、当然であるがわが国でも電子政府や大規模災害、疾病等に対応するため関係機関で人為ミスを含むこれらの課題はすでに検討されている(内閣府が整備を進めている防災情報共有プラットフォームである 「中央防災無線網」 等)と信じたいが、2009年2月9日に開催された内閣官房「防災分野における地理空間情報の利活用推進のための基盤整備に係るワーキンググループ」第2回会合で(財)全国地域情報化推進委員会の 説明資料 のスライド29頁(自治体は現状、防災現場で紙や口頭で収集した情報を防災情報システム...

米国FRB、OTS等によるクレジットカード規制の厳格化等に係るレギュレーション等の改正

  Last Updated: March 6,2021 〔前書き〕  本ブログの原稿は、2008年12月20日に一部書き上げていた。しかし、仕事の関係で棚上げになっていたが、2009年4月30日に連邦議会下院でクレジットカード・ユーザー保護法案(HR 627)が通過、近々上院も通過する旨のニュースが入ってきた。  約半年遅れでありニュース価値としてはいかがかと思うが、念のため同時期のブログを検索してみた。やはり米国のクレジットカードの金利に関する専門的なものは見当たらなかった。筆者はHR 627をめぐる原稿を書き始めていたが、FRB等のレギュレーションを正確に理解していないと今回の法案そのものの意義が理解できないであろうから、あらためて取りまとめることとした。 〔本文〕  2008年12月18日に米国連邦準備制度理事会(FRB)、財務省貯蓄金融機関監督局(OTS)および信用組合管理庁(NCUA)は、「サブプライム・クレジットカード」等の被害拡大阻止や金利内容の表示等透明性確保について、クレジットカード利用者保護強化の観点から関係行政規則の最終案を承認、公表した (筆者注1)。 各最終案は連邦取引委員会法(Federal Trade Commission Act:FTC Act)に基づくもので、ほぼ同様の項目・内容である。したがって、今回はFRBの4つのレギュレーションについて規則改正の経緯および内容について説明する(4つのレギュレーションの施行日はいずれも2010年7月1日である)。  (筆者注2)(筆者注3)  特に12月18日の FRBのプレス・リリース や最終案を丁寧に読むと理解いただけると思うが、消費者がいかに複雑な取引スキームを理解できるか、「消費者テスト」や「実証研究」の結果や顧客への各 種通知文書様式やサンプルモデル例 (連邦官報5426頁以下)を同時に公表している。関係規則(レギュレーション)の改正だけでないこのような実践的対応が、今後わが国の金融監督行政のあり方にも影響が出てくることを期待したい。  また、これと時期を同じくして、12月19日付で連邦預金保険公社(FDIC)および連邦取引委員会(FTC)は今回取り上げた「サブプライム・クレジットカード」の取扱い業者である“CompuCredit Corporation(アトランタ...